鼓動(ロー)

□だって、好きだから。
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ローは私のせいで苦しいんだ。

ううん、それだけじゃない、私のせいで傷ついちゃう。私が弱いから。



名無しさんは心に決めた、






そう、この船を出ていくことを。



海に出ることは一人でもできる。

大変なことかもしれないし、苦しいだろうけど、大切なみんなを傷つけたりするよりまっしだ。







名無しさんは島に上陸してるのをいいことに、夜、気づかれないように船を降りた。



一通の手紙を残して。






真夜中の町はとても静かで、その闇に名無しさんは包まれていった。









一方ローは・・・


俺は、気持ちを伝えたつもりだ。

素直に、正直に好きだとは言えなかったが、わかってくれたらしい。


明日、再び名無しさんに会い、返事を聞くことに期待して、不安も感じながら、眠りについた。




















ここ、どこだろう?

これからどうしよう・・・。

私、戦えないし、やっぱ海賊は無理だよね。

お母さんみたいに、強かったら・・・立派な海賊になれたのかな。

行くあてもなく、町はずれの宿に名無しさんは泊まることにした。


月がきれいだなぁ・・・・


そういえば、みんなに海に連れ出してもらった時も月のきれいな夜だった。


知らず知らずのうちに目からは涙があふれ出し、抑えられなくなる。



苦しいよ・・・


こんな苦しさは・・・初めて・・・かも。


心臓とかじゃない。


心が・・・苦しい。












翌朝。



「名無しさん〜〜!!!おはようッ!!」

ベポがいつものように名無しさんの部屋に入ってもそこに名無しさんの姿はなかった。



「名無しさん!?」


ベポはどこかにいるのかと船内を探し回った。



「どうした、ベポ?」

そこにきたのはペンギン。


「名無しさんがいないんだ。」


「トイレとかじゃないのか?」


「ううん、いなかった。」


「・・・・・俺も探す。」


「うん。」



2人は名無しさんの名前を呼びながら探し出す。




「朝っぱらからるせえなーーーー・・・」


「あ、シャチ!それどころじゃないんだよ!」


「ああ?」



寝起きで不機嫌そうなシャチは睨むように2人を見た。



「名無しさんがいねえんだ。」


ペンギンがそう言い放つとシャチの眠気は吹き飛び、走るようにして探し出した。



「名無しさんーーーー!!!名無しさんッッ!!!!」



シャチの大声が船中に響き渡って、それは睡眠中のローの耳のも入った。



「っるせーな・・・・シャチ、てめえ、ばらされてえのか?」



「あ、いや、キャプテン!!!」


「なんだ?」


「名無しさんがいないんです!!」



「なんだと!!?」



ローの眠気も吹き飛び、ローは急いで名無しさんの部屋へと向かった。



「名無しさん!!!」


勢いよく開けた扉の向こうに名無しさんは、いなかった。



どうしちまったんだ・・・・


俺のせいか・・・



俺の気持ちに応えらんねえから、申し訳なくでもなったのか・・・?





自責の念に駆られながら部屋を見渡すと、封筒が目に入った。




「・・・・?」


焦りながらそれを手に取り、乱暴に破り開けた。



「!!!」









「おい!!全員、集まれ!!」


船長命令でクルーは全員集まった。





「これは、名無しさんからの手紙だ。」


「で、なんて!?」


シャチがすかさず聞く。



「この船を降りるそうだ・・・・。」


「なんで!?」


ベポが驚きと悲しみを隠せずに聞く。





ローは重い口を開いた。


「俺たちのことが好きだから・・・」



「はあ!!?なんだよそれ!?」

シャチは訳が分からないといった様子で言った。



「好きだから、俺たちを傷つけたくねえ・・・そう書いてある。」




「「「「「・・・・・・」」」」」





「名無しさん・・・・」


ローは誰に言うわけでもなく、名無しさんの名前を呟いた。




「俺嫌だ!名無しさんは仲間だよ!探しに行こうよ、キャプテン!!」

ベポはローに必死に提案する。


「・・・・」


「キャプテン?」



「・・・・」




ローは迷っていた。

俺のせいだとしたら・・・

俺が自分の気持ちを伝えちまったからか・・・あいつの気持ちも考えないで。

だいたい名無しさんはあんなにシャイなんだ。恥ずかしがり屋で・・・そんな奴にあんなこと言ったらどうなるか・・・わからなかったはずはねえ。

だいたい、俺たちを傷つけたくねえってなんだ・・・?

俺に返事をすることが傷つけることだとでも思ったのか?

お前が、自分の気持ちに反して、船から降りるほうが俺にはよっぽどつれえんだ。



ごめんな、名無しさん、お前のこともっと考えてやればよかったんだ。

自分勝手だな、俺は。


でも・・・それでも、伝えたかったんだ。


見つけ出したら、はっきり言ってやる。
「愛してる」って

だからはっきり言ってくれ。

答えがNOでも・・・



それでも俺たちは仲間だ・・・









そう、仲間だ。

何があっても。









「よし、探しに行くぞ。」




「「「「「「おお!!!」」」」
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