鼓動(ロー)

□愛してるから。
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ローは一人で医学書をめくっていた。

名無しさんの症状に当てはまることから考えられるのはただ一つ。


心臓の病気……



それだけしかわからない。


ありとあらゆる心臓病の症状が出ている。


いうならば、最大の心臓病。





「はあ・・・・」


深くため息をつく。




愛する名無しさん・・・





病気だなんて知らなかった。
それなのに、海へ連れ出しちまって・・
何やってんだ俺は?
ただの自分勝手で…
俺がはっきり言ってやらねえから、
いや、俺が勝手に惚れちまうからアイツを苦しませて・・・





一人で、自分を責めているとドアのノック音が響いた。




コンコン・・・




「ロー、入ってもいい?」



「ああ。」



聞こえてきたのは愛しい女の声。





「もう大丈夫なのか?」



扉をゆっくりとあける名無しさんに駆け寄り、手を握る。



これくらいなら平気なのだ。




「ありがと・・・もう、大丈夫。」





「そうか。」





そういわれてもローはやはり心配で、手をしっかりと握ったまま、ベッドに座らせる。





話すべきか。

話さないべきか。










「ロー、どうしたの?」


ローの悩む表情を見て、名無しさんは首をかしげながら、ローの顔を覗き込む。






どうしたんだろう?いつもより眉間のしわがひどいよ。

あ・・・私、嫌われちゃってるの・・かな。





急に不安になって、心配してたはずの名無しさんが逆に不安そうな表情を浮かべる。





「おまえこそどうしたんだ?」



それを見たローは、頭をポンポンと撫でてきく。




「ううん・・・大丈夫。」



「俺も大丈夫だ。」






どうしようもないくらいシャイで、すぐに不安そうな表情をする名無しさん。

でも、その瞳の奥には、ゆるぎないものがあるのをローは知っていた。



だから、真実を伝えることにした。






「名無しさん。」


ローはきっちりと向き合い、名無しさんの目をまっすぐに見つめた。




「なあに?」


頬をちょっと赤く染めて名無しさんもしっかりとローを見る。





「話しておくことがあるんだ。つらいかもしれねえが・・・」




「大丈夫。みんながいてくれる・・・でしょ?」



そういって、少し無理矢理に笑顔を作った名無しさんを抱きしめたい衝動をローは抑えて、口を開いた。





「あのな・・・お前は、病気だ。」



ローの言葉に名無しさんは驚く様子がなかった。




「そっか・・・。」



それでも少し震えた声が、部屋に響き渡る。




「心臓の病気だ。」



「うん。」




「驚かねえのか?」



ローはうつむかないで、しっかりと自分を見てくる名無しさんに逆に自分が驚いた。





「うん・・・自分の体のことだもん。・・・詳しいことは分からないけどさ・・・なんとなくは気づいてたよ。」



「・・・・そうか。」




「だから、詳しく教えて?」





不安で押しつぶされそうなはずなのに、名無しさんの病気を本人以上に悲しんでいるローに名無しさんも気づいたのだろうか。

ニコッと微笑んで見せた。






「お前の心臓病は・・・はっきり言って、わからねえ。いろんな症状が併発してるんだ。それにどれも重いものばかりだ・・・。お前がこうして俺と話してられるのも不思議なくらいなんだっ・・・」





ローは自分の目頭が熱くなっているのがわかった。
医者だからわかる。
名無しさんの病気がどれほど深刻なものなのか。
軽々しく、治してやるなんて言えなかった。





「ロー・・・ありがとう。」




静まり返った部屋に名無しさんの感謝の言葉が響いた。






何言ってやがるんだ。
こんな時に、なんで礼なんて言ってやがる。







ローありがとう。
辛いことを言ってくれて。
それに、ありがとう、私をこの船に乗せてくれて。
私、どうなるかなんてわかんない。
死んじゃうのかな・・・
でも、もしそうでも、それでよかったと思う。
だって、海に出ないで、後悔しながらダラダラと人生送っても仕方がないよね。
でも優しいローは、きっとごめんとか思ってるんだろうな。






「私・・・死ぬのは怖くないよ。」



名無しさんの一言にローは固まった。



情けないと思う・・・
俺は、何も言ってやることができねえ。





「海に出て、毎日が楽しくて、こんな迷惑な私とみんな仲よくしてくれて・・・・・ぇっと・・・仲間だって言ってくれて。ずっと一緒にいたいけど、死んじゃうなら仕方がないと思う。最後に宝物を見つけれて、よかったなぁって思うの。だって、宝物見つけるなんて、私もやっと海賊らしい海賊になれたみたいでしょ?」





「名無しさん・・・・」



ローの目から熱い涙が零れ落ちた。





頬を伝っていくその涙。






「俺が・・・」





言ってやりてえその一言。



自分のどこかに残っている冷静さがそれをとどめる。






「ロー。」


名無しさんがそういってローの手をぎゅっと握ってくれた時、







「俺が治してやるからっ!!!」




ローの口からその一言が自然とでた。







「ロー・・・・」



名無しさんの目からはボロボロと大粒の涙が零れ落ちた。






「でも・・・そんな・・・私なんてもう・・・」




ローはあふれ出る涙を無視して口を開いた。




「お前のことは俺が治す!!」


「で・・・でも」


「でもじゃねえ・・・」





「そこまでしてくれるなんて・・・」


名無しさんは涙を流し、ローの手をぎゅっと握りながらうつむいた。



「お前のためなら・・・何でもしてやりてえんだ。」



「・・・・」




「お前が嫌だと言っても俺はお前のためにできることはすべてする。」



「でも・・・どうして・・・・」



名無しさんは船に乗ってそこまで日もたってない自分にここまでしてくれるローの優しさが怖いくらいだった。




「・・・愛してるから。」




「・・・・・え?」





「愛してるからだッ!」



ローはそういって名無しさんを強く抱きしめた。

腕を背中に回して包み込むように抱きしめた。



「/////ろ・・・・ろおおお・・・・」


ど、、、、どういうこと・・・
ああああああ、、、愛してる?
って・・・抱きしめられてるって////
それって・・・・つまり・・・
ああああ・・・///////





名無しさんが倒れそうになったその瞬間にローは名無しさんの名前をしっかりと呼んだ。



「名無しさん!!!!」



意識が吹っ飛びそうになった名無しさんだが、自分の名前を強くよび、肩をぐっとつかんだローに驚いて、なんとか意識を保った。




「はぁああ・・・・はああ・・・・はあ・・・」



呼吸が上がる名無しさんをみて、ローは一歩離れた。



「す、すまねえ・・・つい・・・」


何やってんだ・・・
ただでさえ心臓が弱いってのに・・・
抑えらんねえ・・・
いや、自分の欲求なんてどうでもいいのに、名無しさんを傷つけて・・・バカか、俺は・・!!!



「ろ、、ロー・・・・」



「ん?なんだ?」




「えっと・・あの・・・・・いいいいいい今のって・・・」



「//ああ・・・また言うとお前、倒れるだろうから言わねえが、本気だ。お前の気持ちが聞きたい。今すぐになんて言わねえから・・・ま、そのうちな。」



ローは足早に部屋を去った。








ローは・・・私のこと好き・・・なの・・・


ででででも、どうして!?


ってか・・どうしよう・・・



ロー・・・








好き。








でも・・・・








こんな私じゃ・・・







ドキドキドキドキ























バタン・・・










名無しさんはローのベッドの上で気を失った。

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