鷹の雛(ミホーク)

□望まない過去
1ページ/2ページ


バタバタバタバタ・・・・・







ドテッ!!!!







「何をしている?」


「ランニング?」


「ではなぜ、床を見ている?」


「こけたから。」


「なぜこけた?」


「ん〜・・・なんで?」


「自分で考えろ。」




そんな剣を持って走るからこけるのだ、それくらい気づけ、とミホークは心の中で笑っていた。



「あ、この床滑りやすいのかな?」



キュッキュ・・・・


そういって名無しさんは靴で床をこする。




「ふっ・・・・その剣を抱えているからこけるんだ。」


「・・・・」


「使えないのだろう?しばらく置いておけ。」


「・・・・・」



「どうした?」


一向に剣を放そうとしない名無しさんにミホークは手を差し出す。



「大事な剣だから、もっときたい。」



「邪魔なだけだ。」


「・・・・邪魔とか言わないでよ。これは・・・」

この前も邪魔って言われた・・・


確かにそうかもしれないけど・・・


続きを言わずに名無しさんは剣を抱えて走って行った。






邪魔・・・なんかじゃない。


大切な剣なの。


家族がいなくなって・・・そばにいてくれたのはこの剣だけだったんだ・・・・


どんな剣なのかはわからないし、使うこともできないけど・・・


でも・・・









ドテッ!!!



「いたっ・・・」









こけた名無しさんの横に来て、手が差し伸べられる。


「・・・・」


「素直に俺の手をつかめ。」


「ミホーク…」


名無しさんは白く大きなミホークの手をつかんだ。



「・・・・」



「言いすぎたようだ。邪魔などと言って悪かった。」



自分から謝ることがミホーク自身も驚きだった。

ただ、あの瞬間、名無しさんの悲しそうな顔を見た瞬間、もうそんな顔はしないでほしいと思ったのだ。



「私もごめん・・・」


「お前が謝る必要などない。」


「・・・でも、何も言わずに急にどっか行って・・・それに、やっぱこの剣持ちながらじゃダメだよね。すぐ疲れるし、こけちゃう・ハハッ・・・」


「お前の大切な剣ならば、しばらく俺があずかろう。」


「え?」


「傷つけさせはしない。誰にもな。それとも俺の腕が信用ならんか?」


「いえいえッ!!!大信用です!!」


「ふっ・・・この剣はお前の修行中あずかる。俺に剣の番をさせるのだ、その分修行に精進しろ。」


「あいあいさーーー!!!」


名無しさんはいきおいよく敬礼した。



変な女だ・・・ミホークは鼻で笑った。




名無しさんは剣をミホークにゆっくりと手渡した。


「それじゃ、しばらくお願いします!あと、私の修行のほうももうちょっとかまってくれれば・・・」


「かまうだと?」


「いやぁあ、何したらいいかわかんなくて、ここ2日、ずっと城をランニングしてただけだったし・・・・」


「それでいい。」


「え?」



「毎日城を走っていろ。それに腕立て1000回、腹筋1000回、背筋1000回を加えろ。」





「・・・・ぇええええ゛ーーー!!?」




そんなの・・・・無理だよ・・・


筋肉痛で死んじゃう。



「筋肉痛では死なん。」


「え!?心読まれた!?」


「お前の考えそうなことくらいわかる。」


「・・・・ふんっ!でも、それはちょっと・・・・きつすぎではないでしょうか!?」


「嫌なら、今すぐこの城を出るか?外には凶暴なヒューマンドリルもいるが・・・」



これって脅し・・・と名無しさんは思ったが、あえて言わずに承諾した。



「それじゃ、改めてお願いします!ミホーク先生!!」



「その呼び方はやめろ。」


「ははっ!!ミホーク先生!!!」



「ノルマを倍にしてもいいのだぞ?」



「ぁわあああ・・・・すみません!!!ミホーク!!!」


「ふんっ・・・それでは、今から2時間、走っていろ、それが終わったら、俺の部屋へ来い。」


「はーーーい!!」





名無しさんは颯爽と走りだし・・・



ミホークは名無しさんの刀をもち、自室へと戻った。






次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ