D−grayman*長編 ―花嫁に呪いを―

□六夜目 最大の悲劇 〜序章〜
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「リリア?どうしたんですか?」

ハッと目を見開くと、アレンの顔が近くにあった。

『何でもないよ。少しボーッとしてただけ。』

笑って言うとアレンはホッと溜息を吐いた。

「そうですか……ちゃんと寝てるんですか?」

『寝てるよ!うん。寝てる……』


そう、寝てる。
寝ているから……


「そろそろ行きましょうリリア。神田を呼びに。確か、アジア支部でしたよね?」

『……うん。』

「それにしてもヨルダンで任務かぁ……僕は……」



アレンの声が段々と遠退いてゆく感覚に陥る。
ふっと視線を右にやるとアレンが少し幸せそうに話している。
逆の方、左に視線をやると大量の蓮の華が咲き誇っていた。

これは幻だろう。

ユウから以前聞いた、蓮の華の、幻の話。
きっと同じモノの様な気がする。






数日前、ティキにそっくりな【ダレカ】を見て以来、この蓮の華の幻が視界の何処かから消える事は無い。
必ず何処かに映っている。
目を瞑るか眠るくらいしかそれを見ずに済む方法は無い。
だが、逆に眠れば毎夜のように夢の中にその【ダレカ】が出て来て、朝になると汗だくで目覚める。


この悪循環の繰り返しで疲労や寝不足が溜まっていってゆく。
そして日増しに濃くなる幻の影や【ダレカ】の姿の所為で更なる悪循環に引き込まれる。
これがずっと続いていた。
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