白猫が鳴いた
□白猫が鳴いた
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結構前に松陽先生が一匹の子猫を拾ってきた
初めは、やせ細っているのにも関わらず、異常なほどの白く艶やかな毛並みと、形のいいオッドアイに見惚れていた
しかし、そいつは猫のくせに、猫らしくない
普通の猫なら、ニャアニャアとないて飯にすがろうとするだろ?
そいつは松陽先生が与えた飯も食わず、一度も鳴いていない
ましてや、子猫であるのに。
そして先日、そいつがいなくなった
いつもは、俺達3人の近くにいるのに、どこを探しても見あたらない
猫は、死んだ姿を人にみせないと言うけれど
そんな事はどうでもいい
あの随分と痩けた体で、遠くまではいけまいと近辺を探すが見当たらない
松陽先生が拾ったという竹林までは、随分と離れてはいるが念のため探しにいくことにした
竹と葉と葉がぶつかり合い、俺の頬と地面に光の模様をつくる
いったいどのくらいまできたのだろうか
前を向いても、後ろを向いても竹だらけ
聞こえるのは俺達3人の声
手分けして探そうにも、この竹林は3人共初めてなわけで、だれかが迷子になったとしたらこれまためんどくさい。
太陽がだいぶ傾いてきたころ、俺と銀時は疲れ果て、その辺の出ている岩に腰をおろした。
途端に、先程まで黙りこくっていたいたヅラが「ちょっと静かに!」と叫ぶ
そして銀時の「誰もしゃべってねーよ」の突っ込み
ヅラは「…何か聞こえないか?」と小声で言った
耳をすますと、たしかに微かではあるがどこからか猫の鳴き声が聞こえる
あの白猫は鳴かない
だが、もしかしたら、と思って、俺達はここを中心とし遠くへいかないことを約束した
太陽は沈んだが、辺りは月の光で明るかった
猫の声は大きくなった
いや、猫のすぐ近くにまできたのだ
俺の目の前には、ボロボロな神社
いったい何を祀っていたのか、賽銭箱にかかれた文字は消えかかって、建物の所々はもう苔や、蜘蛛の巣がはっていた
意を決して、神社の入り口を開け中に入ると、やはり屋根は穴だらけで、しかし、そこから差し込む月の光は交差し、幻想的空間を作り上げていた
そして、必然的いや、偶然であるのか、月の光はある一点を集中させている
その一点には、直径1m高さ50cmといったところか、木箱がひとつあった
といっても、このおんぼろ神社と不釣り合いな綺麗な木箱で…
背後でニャアと声がした
振り向くと入り口に猫がいた
そう、こいつを探すのに一日中動いたのだ
一言なにか文句つけようとしたが、そいつは俺の横を通り過ぎると、木箱へ飛び乗る
やはり、そいつの毛並みは綺麗であった
月の光もあるが、痩けた体をよりいっそう魅せてくれる
猫は、その形のいいオッドアイで俺を見つめると、また、ニャアと言う
まるで"これを開けてくれ"とでも言うかのように。