君に送るは、エンゼル・ランプ

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「どうだった?」

森を少し進むと、声をかけられた。
振り返れば見慣れた顔が木に背中を預けて立っている。
少し長めの青みがかった黒髪とターコイズ色の瞳が特徴的な青年だ。
黒いスーツに身を包んでいる。
むすり、とむくれている様子を見ると待たされたことを怒っているようだ。

「……疲れたわ。」

ぼすっと彼の胸に頭を埋める。
聞こえる心地好い心音が眠気を誘う。

「"うるさかった"のか?」

そう聞かれ、先程の男を思い出す。
少しやつれた優男だった。
ダークブラウンの短い髪と瞳。
物腰は柔らかで、側にいてもいつもよりは疲れなかった。
しかし、悪魔の話題をした瞬間彼は一変した。
憎悪が渦巻き、殺気が漏れ出した。
吐き気がするほどの負の思いに堪えるのがやっとだった。

「悪魔が嫌いみたいよ。」

「神父様だからな。」

「…きっとそんな理由じゃないわ。」

そう伝えれば、彼はふーんと興味なさそうに答えた。

「また会うのか?」

「……ええ。使えそうだから、彼。」

クオンと名乗ったユグゼルク。
悪魔を心底憎む彼は、絶対に戦力になる。
ふふ、と笑えば、彼にわしわしと頭を撫で回される。
見上げれば、帰るぞと言われた。
顔は相変わらずふて腐れたままだ。

「おんぶ。」

「…ったく。我が儘なお嬢だな。」

言いながらもおんぶしてくれる彼は優しいと思う。
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