あやし事務所

□全てよ終わって消えていけ。裏切りと共に
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 あやし事務所内はいささかあわただしかった。それもこれもそう蓮が持ってきたこそ泥が働いては理矢に寄越していた宝物についてだ。数日分しかないはずのそれは、なのに信じられないほどたくさんあり理矢達の頭を悩ませていた。
「聞いたことはあったんしゃいけどね。盗むのだけが生き甲斐の盗んだ物にはトンと感心なしの馬鹿な盗人妖怪が居るって。まさかそいつが関わっているとは………。ああ、これ返すにも一苦労しゃい」
 重いため息が落ちた。宝物が溢れているその場に聞こえてきたのはため息だけではなかった。とんとんと軽やかに扉が叩かれる音が聞こえた。
「ああ、そういえば今日一旦依頼主が来ることになってたんしゃい。丁度良かったしゃいね。この中からさがして貰おうしゃい」
「賛成ですね」
 そんな会話がなされ色々とグチャグチャなそこに依頼主を招き入れることとなった。
「あら、宝物が沢山です事。もしかしてあの盗人が今年一週間で盗んだ物全て持ってきたのかい。おろかだね。あれは盗むことだけが仕事のようなやつだから色々と危ない物まで盗んでいるというのに。まあ、保存はちゃんとしとくことさね。盗まれちゃ大変だ事よ」
「今年一週間………。アホかそいつは」
「本当しゃいね。何処まで盗みにいったんしゃいよ」
「あの盗人は盗むことだけが生き甲斐故に、殆どの時間を泥棒に費やしておるのさ。泥棒に使ってない時間など一週間に5時間もないわ」
 更に呆れるしかないことだが女はくすくすと笑い続けている。
「よく知ってるんしゃいね」
「知り合いでしてね」
「なら、わざわざ依頼しなくともそいつに頼めば良い事じゃないんしゃい」
「それは無理なのよ。まず、連絡がつかないし、運良く付いたとしても返してくれる可能性など無いに等しいのだから」
「ほう。で、どれがあんたのしゃい」
「ちょっと待っていて下され」
 探し出す女はそれほど時間はかけなかった。
「ああ、ありました。これです」
 女が手に取ったのは手の平サイズの蒼い石だった。縁を銀と緑の石で彩られ、更にその中に小さな色とりどりの石が埋め込まれた物だった。それをみた瞬間理矢や藤蘭は驚き目を細めていた。
「それ本当にあんたのしゃい」
「ええ、私目のですが」
「嘘ですね。それは海原の宝玉。強い力を持ち持つものの願いを叶える至宝のもの。深い海のそこである妖怪たちに守られていたそれが貴方の物なはずがない」
「し・・・藤蘭の言う通りしゃい。どういうつもりしゃいか」
二人の視線が女をいぬき興味なさそうにそれらを見つめていた蓮に雪姫、そして何故かいたお沙江の視線が女が持っている石へとむく。
女はにやりと笑っていた。
「やはり気づきますか。では、仕方がありません。実力行使で奪わせていただく。そしてそのついでにお主らの命もの」
 女は不敵に笑い取り囲む一面を見つめていた。
 それぞれが戦闘対戦へと入っているのを見つめ女は更に笑みをぅかめる
「おうおう。怖い目をして居るの」
「そりゃどうも。それよりやめておいたらどう。5対1じゃ勝負にならないんじゃないしゃいか?」
「誰に言って居るのじゃ。妾にそんなことを言う者、実に久しぶりに見たぞ。それに5対1ではない」
「どういう事しゃい」
 女は笑う。
 ただ笑う。
「4体2よ」
 響いたのは女の声ではなく子供の声だった。
「人よ人よ人の子よ〜。風が吹く吹く風が吹く〜。飛ばされまいと気を付けよ〜。飛ばされたくなければ人の子よ。風の前に跪け〜」
 それは不思議な音程の歌だった。それが歌い終わると同時に突風が事務所内を襲い荒らしていく。立っているのも出来ないほどの風だった。
「跪きなよ。理矢お姉ちゃん。そして、あやし事務所なんてたたんじゃいな。そうしたらまだ生かせてあげるよ。あたしもそいつも無意味な殺生何てしたくないんだから」
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