あやし事務所
□雫は化け物に消える
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女が笑っていた。暗い世界で。
「馬鹿ね」
クスリと薄く笑む。
女は静かに見つめていた。
スクリーンの中で起こる出来事を。其れは女に取ったら最高の戯曲だった。
誰もが叫んで涙し、我を忘れている。
その光景が女はどうしようもないほど可笑しかった。
「馬鹿ね」
もう一度呟く。
「なく必要なんて何処にもないのに」
喚く人びとを見る。その先に続く物を
「今回は誰が生き残るのかしら。あの二人は生き残ってくれるのかしらね……。きっと大丈夫よね」
女が笑いながら見るスクリーンには姫達の姿も映っている。ふっと場面が変わる
「あら?」
女が驚いたような声と共に画面を凝視した。その口元が大きく笑みを形作る。
「あの子達……。何のつもりかしら?もう一度この場に訪れるなんて」
穏やかな口調。
女は楽しかった。
自分から逃げたはずの存在を見付け楽しかった。何の為にこの場に訪れたのかは分からないが其れは決して偶然ではないだろう。
ならば、どうして此処にいるのか
女にはそんな事些細な事だった。
小さすぎて笑ってしまえる事だ。
只女は可笑しかった。笑えてしまった。
「愚かよね。後少しだったのに……
ふっふ、あの二人はそんな失敗しないと信じているわ。ちゃんと道に行ってくれるわよ」
女が優しくスクリーンを見つめる。
その瞳は慈しむようだった。それでも起きている事は醜い。其れを女はまるで幸せのただ中にいるように見つめているのだ。恋人を見つめるようなそんな眼差しで。
「大丈夫よ」
女が囁く。
「何も怖がらないで」
女は幸せだった。
「だて、全てはなるのだから」
満足だった。
クスリと笑む。
「怖がらなくて良いの。泣かなくて良いのよ」
スクリーンの中で泣きわめく人びとを見つめる。
「でもね、憎しんで貰わないと、生きたいと叫んで貰わないと駄目なのね」
女が酷く醜くそして妖艶に笑った。
「殺し会いをしてくれないと。ねぇ、1」
女が愛しげに名前を呼ぶ、でてくるのはあの化け物だ。后星と豪雨を閉じこめていた、そして、今も沢山の人の魂と躯、山岡沙魔敷猫を埋め込んで作り上げられた化け物。
「何も悲しむ事はないのだから」
女が笑う。
「大丈夫!
もうすぐだから」