あやし事務所

□五人ではない五人
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「お帰りなさい」
聞こえてきた声に驚いた。目の前にいる人に驚いた。
尾神家の玄関にて。
蓮は驚きでその人を見ていた。
「あんた、何で…。」
「挨拶したい気分だから」
ニコリと笑った少女の名はその昔は江戸優菜。今は藤蘭優菜と言う。お気付きの人もいるだろし、忘れている人もいるだろう。彼女はある事件の犯人であり、今だ出ていないがあやし事務所と言う会社の社員である藤蘭優月の妹である。
優菜はその事件以来、実は尾神蓮の家で暮らしていたのだ。だが、今までこんな風に挨拶しに来たことはない。故に今、蓮は驚いている。
「私が挨拶しに来たのそんなにおかしい?」
「何時もしないだろう」
狐のような笑みを浮かべた優菜にそう返せばだよねと返された。
「今日はさ、ほら誰もいないじゃん!」
「いつもいないよ」
「嘘つき。幽霊のお姉さんがいるじゃん」
少しだけ拗ねたように聞こえたそれに蓮は理解した。
「見えてたのか。それで人にいるのがバレるのが嫌だったの」
「そう言うこと。どうせ幽霊さんを除いたら全員私がしたことなんて知らないんだけどね」
「アイツは知っているのか?」
「そりゃあ、知ってるでしょ。あ、そっか。蓮お兄ちゃんは知らないのか」
何かに分かったらしい優菜は蓮を見た。何時もは蓮が家に帰ってくる時、頭の上辺りに幽霊であるとある少女春陽が張り付いているが今はいない。それをめを細めてみていた。見えない何かを見ようとするように。
「知らないってなにがだ」
「あの、幽霊さんは名前なんて言うの?」
「天娜春陽だよ」
「そう。偽名だね。でもすべてが偽名な訳じゃない。偽名なのは春陽の部分。彼女の名前は江戸天娜だったよ」
目を蓮が見開く。優菜は笑った。
「笑ちゃうでしょ」
そう笑う優菜だけど蓮は凍りついていた。その名前をその人を知っていた。
「それて…」
「笑ちゃうでしょ」
もう一度口にした彼女は笑っていなかった。氷のような瞳をしていた。冷たくて悲しさの詰まった氷。
「幽霊に言われて5人組を探してるの?」
「そうだけど」
「五人じゃないよ。五人じゃないのよ」
彼女は言葉を出した。
「知ってるの?」
「うん。そして、五人じゃない。あれは決して五人ではないわ」
「どういう…」
「・・・それは言わない。言えないわ。でも、どうしたら良いのか私は知っている。蓮お兄ちゃん。私の言うこと聞いてちょうだい。これは引き伸ばしたら引き伸ばすだけ嫌なことになるねよ」


優菜はじっとどこか遠くを見ていた。
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