あやし事務所

□零れていた記憶とともに
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時は少し遡る。
そこはいつかの暗い部屋。
細長い箱らしき何かにやはり女が座っていた。辺りは前と変わらず黒と赤で塗りつぶされている。赤が前よりも若干多い気がするのは気のせいではないだろう。彼女はため息を吐いた。隣の少女は能面のような表情をしている。
「どうだった」
 分かってる癖に女が聞く。苦虫を噛み潰す彼女とは違い、隣の少女は平然としていた。
「失敗したわ」
「そう」
 少女の言葉に女はただ微笑んだ。予想外の反応だ。知っていたとしても、聞いたらまた怒り出すかと思っていたのに。そんな様子を女は微塵も見せないで笑っている。嬉しそうだ。珍しい。いな、可笑しい光景だ。
 女が私達の方を見る。
「まあ、それは良いわ。所詮杜の鏡も月の瓶もあったらいいな的な物だったのだからね。それより、やっと出来上がったのよ」
 ぞっくりと背筋を何かが走った。
 良くない物がこの先にある。
 勘がそう告げる。
 見たくない、見るな。
 勘が警鐘をあげる。でも、彼女に女を止める権限はない。
 冷や汗が流れ落ちるのを他人事のように観察した。
「見て頂戴」
 女が笑う。
 足が踊る。
 逃げ出したい。
 逃げられない。
 訪れる恐怖。
 それは現れた。
 それは歪な格好をしていた。人から動物、虫、妖怪色々な何かをくっつけ合い、ごちゃ混ぜにしたような異様な格好をしていた。大きな目がランランと輝いていて不気味だ。
 ひっと息をのんだ。。
 能面のようだった少女が初めて表情を暗く動かす
女は笑う。
「この子の面倒をお願いね。早速だけど散歩に行かせてあげたいの」
 ふっふと不気味な笑顔を浮かべる。
「大丈夫よ。貴方を的とは認識しないから」
 そう言う問題ではないと口に出そうとして、理性で止める。そんな事が言える私ではない
「お願いね」
 女が笑う。
「行き場所は何処でも良いわ。この子が行きたいところに行かせてあげてね」
 女がさも優しげに笑った。

 そして、中平千と岩永姫は現在に至る
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