長編/柵-fetter-
□第2章〜第2の試練・結婚〜
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シャワーを二人で浴びたあと―――ベッドの上で裸のままアキは私を後ろからぎゅっと抱きしめ、肩口に顔を埋めて言った。
それは、突然の、本当に突然の言葉だった。
「―――結婚が決まった」
「!」
「オヤジの命令だ。 指定した相手との結婚を王位継承戦争の条件に加えやがった」
「……」
一瞬、目の前が真っ暗になった。
……でも、アキとの結婚は私には到底望めないコトは以前から覚悟していて―――。
私は動揺を隠すように、なるべく明るい声で言った。
「そ…そう……。
……よ、よかったわ。 ちょうど契約が切れる頃だし、ね。 どうしようかと思ってたのよね」
「権兵衛」
「アタシは神九条の家には似つかわしくないし。 もとより、愛人レベルの人間だもの」
「権兵衛」
「そ、それで、アタシはいつココを出ていけば……」
「権兵衛っ」
一気に捲し立てるように話す私の肩を掴んで仰向けに倒し、彼は片方の手のひらで私の顎を上向かせるようにぐっと掴んだ。
「……お前は平気なのかよ?」
アキが苦渋に満ちた顔で、悲痛な声で呟く。
「………平気も何も…アタシたち、初めっから身体だけの関係じゃない……」
そう言ったものの、自分で放った言葉に傷つく。
「……だから……平…気…」
「じゃあ……なんで泣いてんだよ……?」
「泣いてなんか……っ」
そう言いながらも、両方の瞳から止めどなく涙が溢れてきた。
そんな私をアキは抱き締める―――。
「……っ…!」
力強く抱きしめられて、体が少し離れたかと思うと、今度は息継ぎも出来ないほどのキスを与えられる。
その瞬間、一気にあふれてくる、アキへの想い―――。
「やだ……やっぱりアキと別れるのなんてやだ……!
正妻になれなくていい、愛人のままでいいの、ずっとアタシをそばにおいて……っ…」
私はアキをぎゅっと抱きしめた。
アキも私を抱きしめ返してくれた。
その夜は、ただただ抱きしめあって眠った―――。