長編/柵-fetter-
□第2章〜第2の試練・結婚〜
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私にとって衝撃的な、そして、最悪の言葉にショックを受けたあの日から、全てが一変する……かに見えたが、実際のところ、何も変わっていなかった。
私たちは相変わらず一緒にいたし、今までのように毎晩愛し合ってもいた。
たまに、結婚の準備でアキがほんの少しの時間、不在になるくらいだった。
結局、私たちの関係はそのままで、でも、アキは総帥の命令通り、神九条一族の末席に連なる女性と結婚する。
アキや私にとっては急なコトだったけれど、以前より何かと計画されていたらしく、突然の宣告から3ヶ月もしないうちに結婚式と披露宴となったのである。
そして、今日この日―――アキは都内の神社にて神前結婚式を挙げていた。
私は当然列席するコトはありえず、暇をもてあまし、銀座にショッピングに出かけていた。
ふと何気なく見た腕時計は午後8時を指している。
(あーあ、いまごろ披露パーティーなんだろうな……)
アキは三響HDの常務取締役で。
三響グループ会社のいくつかの顧問もしていて。
そして、神九条本家の次男で。
神九条の総帥候補の一人で。
その結婚お披露目パーティーは今日と明日の2日間にわたって繰り広げられるから、今日は私のところにはこない……。
(今日は、じゃなくて、しばらく…だろうな……)
さすがのアキも新妻をほったらかしにして私のところには来ないだろう。
(アキが…私以外の人を抱くなんて……)
そう思うと、彼は『愛してるのはお前だけだ』って言ってくれたけれど、やっぱり嫉妬してしまう。
そんなことを考えていると、気がつけば前に勤めていた店の前にいた。
「あ……あれ…? なんでここに……」
我ながら不思議に思いながら踵を返すと、後ろから声を掛けられた。
「あら? カオリちゃんじゃない?」
「へっ?」
昔の源氏名を呼ばれて思わず振り返ると。
そこに勤めていたときにお世話になったママがいた。