水思路

□プロローグ
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少し肌寒い季節の夕方。
青いイヤホン、水色のマフラーをし、特に普通の女の子と
変わらない様子なのに目立つ少女。
透き通るような、水色に近い青緑色の髪と目。
可愛いとも綺麗とも言えるような容姿。
良い意味で目立っている。
しかし、少女は自分が目立っていることなど気にもせず、駅のホームで電車を待っている。

「幸村っ!」

突然、背後から聞こえてきた叫び声に少女は振り向いた。

1人の学生が倒れていた。

囲むように同じ制服の集団がいた。

救急に電話する者、呼吸の有無を確認する者、指示を出す者。
見事だと思わず、少女が思ってしまう連携。

少女は、野次馬の間をするりと抜け、近寄る。
倒れている学生の前まで来ると、深呼吸をして目を瞑る。
ゆっくりと目を開ける。ほんの一瞬、少女の目がエメラルドグリーンになる。
が、すぐに元のシアン色に戻った。

『一応、死にはしないから安心して?』

そう言って倒れている学生の横に片膝をついた。
反対側にいるメガネの学生の目を見て静かに続ける。

『けれど、かなり良くない。覚悟をしておいた方が良い。』

そう言うと、少女は自分の髪の毛を一本抜き、倒れている学生の手首に結んだ。
『電話する。』と言って場を離れ、仲間であろう人達に、聞こえない様に話し始めた。


『癒月さん、また、お願いします。』

ーー。ーーー、ーー?

『はい。多分、ギラン・バレーに似た何かかと。
 私には判断しかねますが・・・。』

ーーー、ーー。ーーー?ーー。

『はい。あ、念の為、強めに護符を付けました。』

ーーーー、ーーー。

『はい、夜に。では。』


電話が切れる頃には担架で運ばれる所だった。
それに付いて行くと、背の高い目を瞑っている様な人が口を開いた。

「先ほどの電話だが、本当なのか?ギラ…」

病名を言いかけたので、口元に人差し指を持って行き続きを制した。

『読心術でもできるのかな?
 今、その名前は出さない方が良いよ。
 正しい結果は一ヶ月位すればわかるから。』

それだけ言い、前を向くとメガネの人と目が合う。
どうやら会話が聞こえてしまっていたらしい。

「貴女は一体・・・、」

『気にしなくて良い。救急隊に話すことあるから先に行くね。』

そう言うとメガネの人は黙ってしまう。
落ち着いている様だけど、かなり不安なのだろう。少し、俯いてしまっている。

『不確かっだから何とは言えないけど、死なないからそこは安心して?』

メガネの人の頭を軽くぽんぽんとすると、スタスタと外に出る。


少女がロータリーに出ると、ちょうど到着したところだった。
救急隊の元へ行き、病院名を告げた。

「えっ、そこだと此処からは時間が。。。」

『大丈夫。死なないから。癒月という医者にを呼んで貰って、奏という名を言えば通るから。』

いつの間にか後ろに、先ほどの背の高い人が居た。
少し驚ろいていると、名を伺っても?といわれた。

『水神 奏。それじゃ。』

とだけ言うと野次馬の中に姿を消していった。
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