短話

□月夜
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「お前の無鉄砲さは変わらないな。」
『またその話ですか。』
「何度しても飽きないのでね。」
『そろそろ飽きてもいいんじゃないですか。』

1年前、まさに私は無鉄砲なことをしでかした。


『教授。』
「苗字か」
『私、教授が好きです。』
「なにをふざけた事を。」
『ふざけてなんていません!本当に教授が好きなんです!』
「何故。」
『…わかりません。』
「ではただの思い込みだ。」
『違います!…理由なんて必要ありますか?!』
「あぁ。子供の考えなど私には理解できないのでね。」
『…分かりました。私は子供じゃありませんが、教授に私を理解していただきます。』
「どういう意味だ。」
『1つだけ許可をください。』
「断る。」
『この部屋へ私が来た時、追い返さないでください。』
「勝手なことを。」
『そのまま30分はいますが、その後に帰れと言われれば帰ります。』
「私の部屋なのだから当然だ。」
『では交渉成立ということで。』
「許可した覚えはない!」
『今日はもう30分いましたが、どうですか?』
「帰れ!」
『分かりました。失礼します。』


と、そんなことがあり1年が経つ。
変化があったとすれば、半年経った頃に30分では追い返されなくなったくらい。
その後私を理解し、何かが進展して…などということはない。
今でも一応薬学の質問とか理由をつけて部屋へ入っている。
3人掛けのソファには私一人が座っているし、今飲んでいる紅茶も自分で淹れた。

『ねぇ、教授。今から外に出る用事はありませんか?』
「ない。」
『少しは考えてから答えてくださいよ。』
「ない。・・・こともないか。」
『なんですか?!』
「金木犀の花を取りに行く。」
『いいんですか?』
「嫌なら寮へ、」
『行きます!!』
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