短話

□月夜
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「童謡」



『…おばけなんてなーいさ
 おばけなんてウソさ
 寝ーぼけーた人が
 見間違ーえたーのさ』
「レイブンクロー10点減点」
『ぅわッ!!おばけ?!』
「さらに10点減点。」
『何だ…おばけかと思いましたよ。』
「そんなもの、毎日見ているだろう…」
『違うんですよ、ゴーストとおばけは微妙に』
「ところで、何故こんな時間に出歩いている?」
『あー、』
「苗字。」
『満月を見たくて。』
「満月?」
『私の部屋からは方角が違うので見れないんです。』
「何故満月を?」
『綺麗だから?』
「寮に戻れ。」
『えー、前回は天気が悪くて見えなかったんですよ?!』
「毎回満月のたびに寮を抜け出していると自白するのか。」
『げ!!』
「私の部屋へ。」
『教授の部屋って地下じゃないですか!』
「今日は満月ではない。昨日だ。」
『嘘ッ!』
「嘘をついてどうする。行くぞ。」

首根っこをつかまれて、夜よりも暗い地下へ向かう。
行き慣れた扉の向こうは、珍しく暖炉に火が灯り温かい。
いつものソファに座れば、向かいに教授が腰を掛ける。

「秋夜は冷えるだろう。」
『寒いときの方が空気が澄んでいて綺麗にみえるんですよ。』
「それならそんな薄着をするな。」
『え、出歩くのは許してもらえるんですか?』
「そんなわけないだろう。」
『じゃあ満月の日は教授が巡回するようにしてください。』
「満月の夜は別の用事がある。」
『あ、そっか…ルーピン先生の、』
「そういう事だ。」
『それにしても、満月が昨日だったなんて。』
「好きな割には何も知らんのか。」
『行き当たりばったりな性格なもので。』
「知っている。」
『ですよねー。』

そりゃあそうだ。
私の性格なんて、教授は私の次に詳しい。
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