短話

□対価
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「対価」



私はスネイプ教授が好き。
いつから、どうして、そんなのは何もない。
ただ気が付いたら好きだった。
質問を理由にたくさん教授の部屋に通った。
始めは執務机に座る教授の前に立ち、面倒臭そうにしながらも答えてくれた。
それが少しするとソファを勧められた。
向かい合って座っていたのが隣になり、ピンと伸ばされていた背中は少し丸められた。
少しずつ、少しずつ、人より警戒心が強すぎるこの人のそばに寄った。
私を見ても眉間に皺は寄らなくなったし、ただ話をするだけの日もたくさんあった。

いつものように扉の前に立つ。
ノックをして名前を言っても返事はない。
この時間ならいると思ったのにな…。
そっとノブを回すと不用心に開いてしまった。

『教授?』

明かりを落とした部屋の奥、いつもなら私が座っている側に教授がいた。

『教授?どうしました?』

ふと見るとテーブルの上にはお酒の瓶。
呼んでも反応がないので、隣に座った。
いつもなら教授が座っている側に。

『教授、大丈夫ですか?』
「…あぁ。」
『酔ってます?お水持ってきましょうか。』

薄暗い部屋でも、ここなら目隠しをされたって何かにぶつかることはない。
水を透明のグラスに注ぎ、部屋に戻る。
暗さに慣れた目で教授を見ると、教授はこちらをまっすぐに見ていた。

どうぞ、とグラスを渡したがそれが受け取られることはなく、手首に強い力が加わった。
グラスが割れる音がした気がするけれど、それはどこか遠くで聞こえた。
背中にはソファの感覚、訳も分からないうちに教授越しにうっすら天井が見える。

『教、授?』

引っ張られた片方の手はソファに押さえつけられて、もう片方の手で教授の肩を押してみたけれど、ビクともしない。
教授の片手はすでにブラウスのボタンを外し始めていた。
教授の顔が近づき、キスされるのかと思えばそのまま私の首元に唇を寄せた。

恥ずかしい、怖い、悲しい

いろんな感情が混ざり合い、混乱する。
対した抵抗も出来ず、声も出ず、だからと言ってその行為に溺れることもできないまま、ただその瞬間をやり過ごした。



   
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