短話
□言葉あそび
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「言葉遊び」
クィディッチには相応しくない全てを洗い流す嵐のような日。
元々あまり興味のない私が今日この日に観戦に行くなんて有り得ない。
窓のない廊下は水浸し。
城の外側にある廊下を避けて校内を歩いていると、こちらに向かって来る影が。
『こんにちは、スネイプ』
「君はあの馬鹿達のように観戦しないんだな」
『観戦している人たちを馬鹿だとは思わないけれど、興味もないのにあの雨に濡れるのは嫌ね。』
この闇に溶けて消えてしまいそうで、それでいて肌の青白さが眩しいのはスリザリンのスネイプ。
私と同じく図書室の常連で、薬草学に関して議論をしたこともある人物。
「これからどこへ?」
『どこへでも行けるわ、何にも囚われたくないの』
「詩的だな」
『あ、今馬鹿にしたでしょう?』
嫌味の応酬も苛立つことはない。
これが私たちのコミュニケーションだから。
わざと怒ったような表情を見せれば、大袈裟なため息が帰ってきた。
「図書室で魔法薬学でも勉強すればいいだろう。あれほど薬草学が出来て魔法薬学が出来ないとは不思議なものだ。」
『薬草の効能を知り育てるのと、調合するのは別のセンスを要するのよ、きっと。』
「弱い言い訳だな。」
『そう?的を射ていると思うけれど。』
「薬草ばかりに気をかけていると指に色素が沈着するぞ」
『あなたこそ、意地悪な顔で鍋をかき混ぜてばかりいると醜い魔女になるわよ?』
「そうなったら林檎を届けてやろう」
『なるほど、だったら王子様が迎えに来てくれるかもしれないわね』
「君は迎えを待つようなタイプには見えないが?」
『それはあなたの押し付けの印象よ』
「…誰かを待っているのか?」
『そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるかな。』
何か考える仕草をしたスネイプはもう一度私と視線を合わせた。
「魔法薬学を教えてやろう」
『なに?愛の妙薬でも教えてくれるの?』
「さあな。」
そう言って図書室とは全く別の方向へ歩き出した。