とある嘘つき達の話

□第8夜
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「ガールお姉ちゃん早く遊ぼうよ!」

ジェームスくんは早く遊びたいそうで、私の回りをくるくると回る。
じっとできないのがすごく子供らしい。

『遊ぶって、またバナナで?』
「うん!いっぱい食べれるしいっぱい遊べるんだ!」

先程の光景を思い出しながら聞いてみると、ジェームスくんは笑いながらそう言った。
どうやらまだやりたりないらしい。
正直気は進まないがタマシイのためだ、仕方がない。

早く早く、と急かすジェームスくんにはいはい、と返すと腕を引っ張られて私は廊下に出る。
廊下には誰も居ないらしい、人影すら見当たらなかった。
ジェームスくんはじゃーん!とバナナを取り出して廊下に置く。
薄暗い廊下に設置されたバナナは下を見ないと気付かないくらい存在感を消していた。

*

少し離れたところで待機していると、誰かがやってくる音が聞こえた。
ジェームスくんも気付いたらしい、私の方を見てにししと笑った。
誰が来たのか確認してみるが、薄暗くて顔がよく見えない。
そうこうしているうちにやって来た人物の足がバナナへと到達した。

「ひぎゃっ!」

ドテンッ!とやたら豪快な音がしてその人物は転けた。
うわあ、痛そう……
ジェームスくんはやったー!と嬉しそうにしていた。

「全くもー……なんなんでしゅかこれ!」

転けた人物が若干怒りぎみに起き上がる。
……ん?でしゅ?
目を凝らしながら近付くと、被害者は先程私が協力関係を結んだフリッツ先生だった。

「あー!フリッツおじちゃん!」

ジェームスくんもフリッツ先生だとわかったらしい、指を指しながら駆け寄っていった。

「! やっぱりジェームスの仕業でしたか!危ないじゃないでしゅか!」
『あはは……すみません』
「ん?ガールじゃないでしゅか。もしや、君も共犯なんでしゅか?」
『ジェームスくんとちょっと遊んでて……』

なるほど、とフリッツ先生は手を叩いた。
どうやらそれほど怒ってはいないようだが……
ふーむ、と少し考え込んだ表情を見せた後フリッツ先生は何か思い付いたようにまた手を叩いた。

「じゃあその遊びに僕も参加するでしゅ!」
『えっ?』

何を考えているんだこの人は。
共犯が増えるのは構わないけど……

「フリッツおじちゃんもするの?バナナころがし!」
「バナナころがし……?混ぜてもらっていいでしゅか?」
「うん!いいよ!」

名前はそれでいいのかジェームスくん。
子供のネーミングセンスはよくわからない。
フリッツ先生はありがとでしゅ!と嬉しそうにしていた。
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