Last Lovers

□届かない
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レギュラスside


先輩への気持ちを自覚した僕は、あれから廊下や図書館で彼女とすれ違う度に目線を無意識に送っては目が合い逸らすというパターンが続いた。
相変わらず声をかけられることはないが、よく微笑んでくれる。
その笑顔を見ると赤面してしまって一度マダム・ピンスに熱があるの?と心配されたことがあった。




廊下をスリザリンの友人と歩いている時、石段の隅で男子生徒とホワイト先輩が向き合っているのが目に入った。
何かを…渡されているようだった。
何より男の真っ赤に染まった顔が気に食わない
その光景を険しい表情で見るレギュラスとは反対に、隣の友人はなるほどと
右手を額に翳して言った。




「おぉーありゃバレンタインプレゼントだな、さすがホグワーツ指折りの美少女ホワイト先輩!」



レ「……バレンタインは明日だろ?何で今日」


「お前わかってねぇなー、あの人ほどの人気だと当日どうなる?」



レ「、他の連中からもプレゼント貰うんじゃないの」



「だろ?!だから前日に渡して、その他大勢のやつらよりもより印象に残そうっていう魂胆さ、あの男子生徒相当真剣なんだろうなー」



うんうんと頷く彼を尻目にレギュラスは唇を噛む。
ありがとうと笑顔でそうプレゼントを受け取っている彼女を見た時何とも言えない嫌な動悸に襲われた。
相手の男子はそのまま回れ右をしてほぼ走りながらその場を去って行った。
今ホワイト先輩と顔を合わせても冷静でいられる気がしなかったのでレギュラスはバレる前に廊下を横切ることにした。



「お?おい待てよ!置いてくなよー」



友人を置いていってることも構わず例の石段を横切る時だった。
プレゼントを物珍しそうに色んな角度から眺めていたからなのか、先輩がわっと体勢を崩し階段を踏み外した。



レ「っ!」



咄嗟にレギュラスは彼女に駆け寄り体を支えた。ふわりとした女性特有の香りが鼻を掠め息を飲んだ。



『あ、ありがとうございます…っ
あれ?レギュラス君…』



階段の差もあり、若干高い位置から彼女を見下ろす形となっていた。
その為意識してはいないのだろうが必然と、その、上目遣いとなっていて
レギュラスはしばらく思考を停止させながら固まった。
そして、彼女の言葉で意識を取り戻すことになる。



『あのーー…出来れば、右手を離してくれると有り難いかなぁっと…』



はっとなり右手を見やると信じられない光景が飛び込んできてレギュラスは情けなく声を上げ飛び退いた。
結構な距離から咄嗟に支えたからなのか、少し先輩の胸に触れる形で背中を押さえてしまっていたのだ。



レ「す、すすすみませんっっ!!!」



『あーいいよー、気にしないでそんなに、地面に頭つきそうだよ?』



なははと笑いながらそう言う先輩はさも気にしてないかのように振る舞っていた。あなたが気にしなくても僕は気にするのに!!
ある意味泣きたい気持ちになりながら脳内で戦争を起こしているうちに先輩はどこかへ行ってしまったらしい。
代わりにニヤニヤ笑いを浮かべながら友人が肩をポンと叩いてきた。



レ「……何」



「いーや?別に?
ただ、うん、いやーなに、普通なことだと思うよ俺は?」



意味有り気に含み笑いをする相手をレギュラスはギロッと睨み付けた。
それを見た友人は肩を竦める。



「そんな怖い顔するなよー、ただレギュラスもちゃんと男だったんだなって安心したんだよ」



レ「何それ、どういう意味?」



そりゃ決まってるだろと言わんばかりに大袈裟な仕草をすると、さすがはスリザリンだなと思わせるようなゲスい一言を言い放ったのだった。



「先輩のいい体をどさくさに紛れて触りたかったんだろ?安心しろ俺も同じこと思ったことが
レ「違う!!!!」



心外であると思わず真っ赤な顔で反論すると、そんな顔で言われても説得力がないと受け流された。
本当に違う!……断じて違う…
僕はそんなに節操の無い人間なんかではない



「で?どうだったよ感想は」



レ「は?…ななな何の」



「表情に動揺は全く見えないが言葉には見えまくりだなお前、決まってるだろホワイト先輩のおっ
レ「それ以上言ったら殺す」



「えーー…理不尽、あ、
…そういやレギュ、お前誰かにバレンタインプレゼントやんないの?ほら、フィアンセとかは?ブラック家の男ならそういうのいるんじゃないの?」



レ「……やらない、それに婚約者だって出来るなら兄さんの方が先だと思う」



「ふーーんそういうもんなの?じゃ出来たらちゃんと教えろよー」



さして興味などなさそうに気抜けた声を返すと、彼はお先にと談話室へ帰っていった。
その背中を無表情で見つめるとレギュラスはそっとローブのポケットに手を突っ込んでその中にあるものの感触をなぞる。
叶うなら堂々と渡したいけれど、それはどうも出来そうない




レ「どうするかな…」



友人の手前相手はいないと言ったが、レギュラスのなかでは渡したい相手は決まっている。
例えそんな気軽にプレゼントを渡せる人でなくとも、英国紳士たるものここで渡さなかったら恥さらしだ…とさえ思う。




レ「…兄さんも先輩に渡すんだろうか」



そう思うと自然と顔が曇る。
兄弟で同じ女性を想うなんて、なんてツイてないんだろう。
自分が一歩引いた立場の手前、レギュラスにはどうしてもシリウスに勝てる気がしなかった。
だからこそ兄が憎い…人の気も知らないで
家のことも何もかもほったらかし
もう少し気を使ってくれたなら、


もしかしたら先輩と今より素直に関係を築けていたかもしれないのに
なんて、単なる被害妄想…なのだろうか
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