Last Lovers

□偽りと苦しみ
2ページ/6ページ



『あれ、もう来てたんだ
ごめんね待った?』




シ「いや、全然!今来たとこ」




おかしそうにくすくすと笑っているシャロンを見ると、自然と顔に熱が集まるのを感じる。
自分が情けない。他の女の子相手ならどうとだってあしらえるのに、シャロンが相手だとどうも調子が出ない。もしかしたらこの俺が素なんだろうか。だとしたらジェームズ達にヘタレと言われても仕方ないのかもしれない。



シ「とりあえず座るか?」



『そうだね』




シャロンがふうっと息を吐くと、辺りの空気がより一層張りつめられた気がした。
告白...は多分ないだろう。期待はしたいが
だとしたらなんだろう
全くシリウスには見当がつかず彼女の言葉を待つしかなかった。
しばらくして口を開いたシャロンの内容は、予想打にしていなかったものに変わりはなかった。





『シリウス...私達、友達のままでいていいのかな?』



シ「え...それは、どういう意味?その、友達以上になるとかそういう」



『え?』



シ「え?.....あ、いや何でもない」




シャロンは少し顔を俯かせると、ポツリポツリと言葉を発していった。
何かを確かめるように、真剣さが伺えた。




『シリウスは、ブラック家の人間でしょ?ブラックって大貴族で純潔なんだよね?
私みたいな混血で、まして実家はその、貧乏だし
私と付き合ってる意味ってないんじゃあないかなって思って』



「そんなことない!!!!」



ガタリと立ち上がったせいで椅子が倒れたが関係なかった。
そんなこと思っていたなんてと、やるせなくて
悔しくて、心外で...色んな感情が一気に駆け巡った。




シ「そんなことねぇよ!確かに性はブラックだけど、俺は純潔なんてくそくらえだと思ってるし、混血やマグル生まれを差別なんかしない!家がどうとかだって関係ないだろ!俺はお前が頑張ってるの知ってるし、優しくて強いってことも知ってる!シャロンはシャロンだろ?身分とか境遇とかそんなのどうだっていいんだよ...少なくとも俺は、お前と友達になれてよかったと思ってるよ」





一気に捲し立てたせいで息が絶え絶えだったが、俺の言いたいことはしっかり伝わってくれたらしく、ほほ笑んで有り難うと言ってくれた。



『私もシリウスと友達になれてよかったと思ってる。最初は近寄りがたかったけど、話すとこんなにいい人だって知ったから、これからも友達でいてくれる?』




シ「当たり前だろ!」




『...うんっ』




ふわりとした感触が伝い彼女に抱き付かれているとわかった。
心臓がこれでもかというくらいバクバク音をたててこんな密室で静かな場所じゃ聞こえてしまうんじゃないかと焦った。
有り難うともう一度耳元で囁かれ、不謹慎にも変な気を起こしそうになる。
そりゃ好きで好きで仕方ない子にこうして暗い密室で抱き付かれて正気を保っていられる男はいないんじゃないだろうか。
とにかく安心させるように背中を撫でてあげて、気を紛らわす為にこう問いかけた。





シ「ずっと思ってたことなのか?それとも何かきっかけがあったのか?」



シャロンはゆっくりシリウスから体を離した。少し名残惜しかったが理性を持ち直した。



『レギュラスに、会って...』




シ「...レギュラス?」





こんなにも気分が一気に落ちることがあるだろうか。その名を聞いて、まして彼の言動次第では彼女をここまで追い詰めたという事実に腹が立ってしょうがなかった。




『気安く話しかけないでって言わちゃって、確かに私なんかが仲良くなれるわけなかったんだなってその時気づいて、だからもしかしたらシリウスも?って思って』


 
シ「なんだそれ」
『でもね!』



『私、レギュラスはまだそれほど親しいわけでもないから大丈夫なの。でも...シリウスを失ってしまったらって思った時、すごく悲しくなった。あなたとはずっと一緒に居たかったの!』



ズキュン



効果音に例えるならこれだろう
シリウスは咄嗟に胸を押さえ、腰を折り曲げるようにしてわなわな震えた。
そんな可愛いことを言われるとは思っておらず完全に不意をつかれたのだ。



『シリウス?』


シ「悪い…っ、ちょっと、ヤバい…」


『体調が悪いの?大変、医務室行かないと!』


シ「だ、大丈夫だから!」



心配そうに見つつもおろおろと右往左往するシャロン。
何とか呼吸も平常近くに戻ったシリウスは気まずそうに頬をカリカリとかく




シ「…兎に角だ、あいつとは仲良くしない方がいい。レギュラスは純潔主義だし、いつも冷めてる、感情が感じられないんだ。シャロンが辛いだけだと思う。」



『…そうみたいだね』



シ「そんな悲しそうな顔するなよ、お前には俺達がついてるだろ?グリフィンドールの連中は絶対に裏切らない。」



よしよしと頭を撫でてやると安心したのかシャロンは目を細めた。
右手を動かしながら少し自分達を棚に上げすぎたかと思ったが、嘘は決して言っていない。それにこれは、彼女が最も頼りにする存在でありたいと思った気持ちの現れだった。

レギュラスなんか気にしなくていい…
自分だけを見て欲しいと思った、ほんの我が儘だった。





リマ「あ、お帰りシリウス」



ジェ「やぁ親友!どうだった?彼女との密会はー…」


ぼーーっと目の前を通りすぎるとドサリとシリウスはソファーに倒れこんだ。
これほ微妙な結果だったのかと顔を見合わせた三人だったが突然突っ伏していた顔をばっとあげた。
今まで見たことのないほどの幸せそうな表情にある意味ぎょっとする。


シ「シャロンが…ずっと一緒にいたいって言ったんだ。」



きゃーと女子みたいな反応をするシリウス。ジェームズはポカンとしてピーターは淡く頬を染めてそれって…と呟いた。




バンっ!



本を思いきり閉じる音でその場の全員が自我を取り戻す。
殆ど無意識だったのか、当の本人であるリーマスもおどろいていて、あぁ、ごめんと栞も閉じず閉じてしまった本を再びパラパラ捲っていた。
内容が果たして頭に入っているのか定かではない。



ピ「ね、ねぇシリウス…それって告白?シリウスシャロンと付き合うの?」



ジェ「それだよ!どうなのさ!」



興味津々にシリウスに近付いていく二人。リーマスは耳と視線だけを傾けた




シ「いや、そういう話じゃなかった…」



なんだよーと残念そうに項垂れる彼ら。付き合ったら付き合ったできっと煩いんだろうなとシリウスは苦笑いを浮かべた。




ジェ「まぁ、頑張れ」



シ「嬉しいけど悲しい...」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ