Last Lovers
□届かない
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シャロンは先程貰ったプレゼントをさっそく開けてみようと一目散にグリフィンドール寮へ向かう途中、リーマスを見かけたので声をかけることした。
『あ、リーマス!』
リマ「?…やぁ、シャロン」
パタパタと駆け寄っていきどこへ向かうのかと聞いたところ行き先は同じだったので共に歩いていくことにした。
リーマスがじっと手元に持っていたプレゼントを見つめてきたので、あぁこれ?とカラカラと振って見せた。
『さっきハッフルパフの男の子に貰ったの、バレンタインプレゼントなんだって!中身は何かなーと思って、寮行ってから開けてみようと思って』
リマ「あぁ、そうなんだ
…バレンタイン、すっかり忘れてたよ」
『あはは!リーマスらしいね
男が女にってのは主流だけど、リーマスの場合は女の子に群がられるもんね』
リマ「遠い目しないでよシャロン」
毎年の光景を思い出すと自然と彼に対して御愁傷様という同情の念が生まれる。まぁリーマスはホグワーツの中でも必ず名前が上がるほど女の子からの人気は高いから仕方のないことなのかもしれないけれども
『リーマス、これ食べる?』
リマ「え、蛙チョコレート?
…ありがとう、気持ちは嬉しいんだけど、でも今は」
『体調が優れないときこそ食べるといいの!顔色あんまりよくないよ、食べたら自然とエネルギー生まれるから』
はい食べてと蔓延の笑みで差し出すシャロンに折れてリーマスは渋々甘い菓子を口に放ると、確かに元気が出た気がしたのだ
リマ「これ、普通の蛙チョコレート?」
『え、普通の筈だけど、もしかして不味かった?手作りだからなー』
リマ「え…いや、凄く美味しいんだけど!ただ、本当に元気が出てきたから」
『あぁ、よかった!ふふふ、それはね…ちょっと待ってて』
シャロンは太ったレディに合言葉を言って中に入ると、リーマスにちょっと談話室で待っていてくれと言い女子部屋に消えていった。何がなんだかわからずしばらくポカンとしているうちにまた彼女が姿を現した。その手には紙袋がぶら下がっていた。
『はい、これリーマスにあげる。元気が出る魔法がかけてあるの、今日みたいに体調が悪い時に食べて?』
リマ「…これ、全部僕に?」
『もちろん』
あ、腐らない魔法もかけてあるから保存は効くと思うよと焦ったように言うシャロン。リーマスは自分の体調を心配してくれたこと、わざわざ労力を使って手作りしてくれたこと、何より自分だけを思ってしてくれたことが堪らなく嬉しかった。
自然と笑みが溢れて彼女の頭を撫でる。
リマ「ありがとう…何て言ったらいいのか、本当に心の底から嬉しいよ。それに、シャロンの作るお菓子はみんな美味しいからね
大切に味わって食べるよ」
『もうー!褒めても何も出ないんだから』
トクリ…
あぁ、また
駄目だよ…そんな資格
僕にはないんだから
リマ「シリウス達にでも自慢してくるよ、じゃあね…シャロン」
妙な気を起こさないうちにその場を立ち去ろうとしたリーマスを彼女が呼び止めた。
無視するわけにもいかないので、短く息をつき振り向く。
『私、何でも力になるから!』
リマ「……」
『えっと、その、
私に遠慮しなくていいからね!!』
シャロンにしては珍しく、告白さながらに顔を真っ赤にしてそう叫ぶとリーマスよりも先に自室へとかけ上がって行った。
リーマスには今の彼女の言葉の真意がわかっていた。そして…なんて優しい子なのだろうと、切なげに顔を緩めたのだった。
自分は狼人間である。
情けなくも秘密を明かすことが出来ない自分に対して、とても寛大に接してくれる彼女にリーマスはとても感謝した。
だが彼女に狼人間だということを伝えるにはまだ勇気が足りない。
ごめん、でもどうしても…
リマ「君にだけは嫌われたくないんだ…」
ぽつりと呟いたリーマスの声は、誰にも拾われることはなかった。