Last Lovers

□届かない
4ページ/4ページ


バレンタイン当日
レギュラスは目的を果たすためチャンスを伺っていたが、結局渡せず仕舞いで既にアフタヌーンティーの時刻になってしまった。



レ「…何で一人にならないんだ」



レギュラスはぼそりと呟き溜め息をはいた。
今の今まで可能な限り彼女を見張っているが(断じてストーカーではない)
まるで裏で何か糸をひいているかのように男から男へと橋渡しにされ、やっとチャンスが巡ってきたかと思うとエヴァンズ先輩が邪魔をする。


百歩譲ってただの女子学生であればよしとしよう、だがエヴァンズ先輩の場合は、兄さんの耳に入る可能性がないことはない。
また後で、近づくなだのなんだのとこっぴどく言われるに決まっている。
でも…






渡したいな






好きになった人に、贈り物をしたいと思うのは、男として当然だろう。そして、少しでも自分という存在を知ってもらいたい。あわよくば素直な自分をさらけ出せたらと思う。
そこまで考えたところでいよいよレギュラスは頭をがしがしと掻き回したい衝動にかられた。




レ「いや、無理じゃない…大丈夫…きっと」



祈るように目をつむってふと外を見ると、運がよかったのか、ホワイト先輩と友達らしい女子生徒が湖の畔のベンチに座り込み話し込んでいるのが目に入る。
エヴァンズ先輩ではない…チャンスだと思った。
何やら話しているがレギュラスはどのタイミングで声をかけるかそっちに集中していた。
ぎゅっとポケットを握り締め意を決して名前を呼ぼうと口を開いた時だった。




「ねぇ、スリザリンと言えばシャロン、あなたがシリウスの弟と話してるの見たって人がいるけど、仲いいの?」



まさか自分の名前が出るとは思っておらずどきりとする。
少し考えたレギュラスはいけないこととはわかっていたが、話に聞き耳を立てることにした。
だって…気になるから
先輩はこの質問にどう答えるのかが
レギュラスが息を潜めていると、彼女はさも通常通りの笑みを浮かべるとこう答えた。




『うーん…別に?
仲いいってわけじゃないよ、だって私嫌われてるしね』







誤解です、違うんです



そう咄嗟に言いたかったけれど、まさか飛び出していくことなど出来まい。
必死で目で訴えるレギュラスに構うことなく、シャロンはとどめの一撃となる言葉を発したのだった。




『最初はこの子と仲良くなれないかなって思ったよ?でも、もう無理かなぁ…きっとさ、



私と彼じゃ、住む世界が違うんだよ』





…………






住む世界が違うんだよ…




時が止まった気がした。
その言葉が、鉛のようにズシリとレギュラスの胸にのし掛かった。

えぇ、そうですね
そうかもしれません、でも
だからといって僕には最初からあなたの近くに寄る権利さえないのでしょうか…
僕がレギュラス・ブラックだから?…



じゃあなんで同じブラックである兄は彼女に受け入れられている。
あんなに素行の悪い仕掛人達は彼女の側に居られる。
狡い…ずるい…ズルイ…


なんて子供染みた嫉妬を抱えているこに対して、レギュラスはふっと口元だけ笑みを浮かべる。反対に瞳は酷く冷徹であった。






レ「こんなもの…いらないですね」




気付けばずっとポケットの中に手を突っ込んでいたため、完全に掌の体温で温まりきったそれを取り出す。
レギュラスは乱暴に包装紙を開くと、中にあったものを引っ付かんで
湖に投げ込んだ。
値段がどれ程したかとか、真剣に悩み悩んだものだとか…もはや関係なかった。





あなたに届かないのなら、存在する価値などないもの同然だと…レギュラスは思った。


悲しみにくれて涙を流したのは、
この日が初めてだったのかもしれない。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ