Last Lovers

□この想いは本物であると
2ページ/4ページ




レギュラスside



スネイプ先輩にいい考えがあると言われた次の日、図書館の奥のスペースに連れてこられたレギュラス。
状況が全く読めず、とにかく呼び出した張本人が帰ってこないかと待っているところだった。
闇の魔術に対する防衛術の教科書と羊皮紙羽ペンを持ってこいと言われたので、勉強関連なのだろうか?
特に成績に不自由していないレギュラスにはあまり必要のないことだと思うのだが...
そんなことを思いながら机に突っ伏していると予想外にも高いトーンの声が耳に入る。




『...え?あれ』





この声、まさか





顔を声のした方向に向けると、やはり見間違いようがない。ホワイト先輩だ。
どうやら相手も予期していなかった展開らしく、目をぱちくりしていた。先に口を開いたのはホワイト先輩だった。




『えっと、私スネイプに勉強を教えてやって欲しい後輩がいるからここに来てくれって言われたんだけど...もしかしてレギュラス君のこと?』




レ「...え」





あぁ、なるほど
そういうことか
自然と会話をする機会をと気遣ってくれたということか
でも悪いが、いくらなんでも急すぎる..
とレギュラスは頭を抱えるのであった。
嬉しいけれど正直緊張のほうが勝っている為、ぎごちなく答える。




レ「多ぶ....いや、そう、です。
お願い出来ますか?」




『いいよ、でも..私でいいの?』





そんな確認されるとは思っていなかったレギュラスは、咄嗟にはい!と大声で答えてしまった。
変に思われたかと泣きたくなったがどうやら幸をそうしたらしく先輩は笑顔で応対してくれた。



『隣座っていいかな?』




...隣?!
ビクリと体が震えた。
そりゃそうか、勉強を教えるのに離れて座るなんてことはしない。
しかし過去にこんなにも近くにいたことなんてない。あ、事故を除けばであるが
そんな少年の葛藤を知ってか知らずか、
シャロンは何だか凄く嬉しそうにしている。




『..で?どこがわからないの?あ、これでも成績はいいほうだと思うから遠慮しなくていいからね!』



ぐっと上体を寄せながらそう問いかける彼女。
思ったよりも近い距離感にレギュラスは沸騰寸前でまともに顔を見れずにいた。





レ「えっとっ、ここのページの....この部分が」



『あぁ、それはねーー』







先輩の教え方はすごく上手かった。
この部分は咄嗟に言ってしまっただけで、内容がわからないわけではなかったが、それでも至極丁寧に理由づけから教えてくれた。
最も、先輩の方を意識してばかりで、隅々まで理解したかと言われればそれはノーだ。

それにしても夢のようだった。
憧れの彼女と、こうして椅子を並べて座っているだけでも信じがたい。
心の底からスネイプ先輩に感謝した。
せっかく与えられたチャンスだった。
何か...アクションを起こさないと
次いつこうして話せるかわからないから
レギュラスは膝の上で拳を握り意を決して口を開いた。




レ「先輩...」



『ん?』




レ「すみません。勉強に関係ないこと..ちょっと言ってもいいですか?」



『何?』




雰囲気が一変したレギュラスを察してシャロン先輩は表情と声色を落ち着かせた。
この時、今言わなければ一生後悔すると思った。




レ「..僕は、あなたが思っているほどに、あなたのことが嫌いなわけではありません。」




『え』




レ「ですから..僕に遠慮しなくていいですから!もっと普通に、接してくれていいですから!僕もあなたに、普通に接しますから」



『レギュラス君...』




言った。
後先はあまり考えていなかった。
でもどうしても彼女に誤解されたままは嫌で、このままなーなーにしていてはいつか愛想を尽かされる。それが怖くて堪らなかった。




レ[それと、前に図書館で会った時..気安く話しかけないでなんて酷いこと言って、本当にすみませんでした。ずっと....」












『謝りたかったのね?』




こくりと頷いて顔を俯かせる。
思ったよりも優しげな声色に、涙が溢れそうになった。否、目尻に溜まっていくのがわかる。
自分はこんなに女々しい男だったかと殴りたくなった。
そっと下から布のようなものが入り込んできて思わず顔をあげた。
するとホワイト先輩がハンカチを片手に優しく微笑んでいた。





『私、完全にレギュラス君に嫌われたのかなーって思ってたから、なんか今の聞いて安心した。それに、やっぱりいい子なんだなって改めて思ったよ!』




”いい子”
その言葉を先輩から聞いて嬉しいと思う筈なのに、なぜか心に引っかかっている自分がいた。
だから自然とこんなことを口走ってしまったのかもしれない。




レ「それは、礼儀正しいとか、自他ともに認める模範生とか、そういう..」




『それもあるけどちょっと違うなー、なんていうのかな
周りを気遣ってあげられる優しさがある、よね?いくら成績優秀でも模範生だとしても、そういう部分が欠落している人っているもの
でも、レギュラス君は違うと思うよ
だから私...きっと、多分だけど



スリザリンは嫌いでも、レギュラス君は好きって思えたのかなぁ』






えへへと照れたように笑っている彼女を放心状態で見つめていたレギュラス。
この人は



僕を”いい子”ではなく”いい人”
として見てくれている。
これなんだ
僕が望んでいた言葉、扱いは
ずっと長い間迷走していた僕の中の個は今、しっかりと確立した。
するとどうだろうか
自然と胸の内が楽になった。
煽てられ、飾られてきた自分ではなくレギュラス・ブラックという人格を肯定された気がしたから。

彼女のお蔭で................







『ふふふ、なんかレギュラス君と近くなれた気がして嬉しいなぁ、
さぁ!まだやってないところやっちゃおうか?』




気を取り直してと腕をまくるシャロンにレギュラスはゆっくりと言葉を返した。



レ「一つ謝らなければなりません、先輩」



『?』



レ「勉強を教えてもらうという趣旨よりも、本当はただ単にあなたと話す口実が欲しかったんです。」




じっと彼女を見つめた。
今度は動揺することも、狼狽えることもない。
もう、自分に自制をかけることはしない。
正直になりたい.....
だから先輩








レ「あなたにもっと近づきたい」










レギュラス程の眉目秀麗な男子から、これだけの殺し文句を言われればどんな女子でもほろほろと来るものだろう。
だが、現実問題、それほど甘くはなかった。
むしろこれからが本当に大変なことであったことを、彼は初めて知ったのだった。
シャロンはきょとりとした表情でこう答えた。




『いいけど、近づくってこれ以上近づくの?』





レ「へ?」




ぐっと椅子を更にレギュラスの方へ移動しぴったりと肩と肩が付くくらいの位置。
そう、物理的に二人の距離は先ほどよりも更に近くなる。
予想の斜め上を行く彼女の行動にレギュラスは今度ばかりは耳まで顔を真っ赤に染めた。
金魚のように口をパクパクさせる彼に追い打ちをかけるように彼女はこう言うのだった。





『んーー、勉強続けるのと私とお話するのどっちがいい?』



レ「う...うわぁぁぁぁ!!」





ガタリと凄まじい音を立てて立ち上がるレギュラス。
なんだこれデジャブな気がする。
首を傾げながら可愛くそんなことを言われればもはや正気など保っていられない。



レ「あ、あの...今日は、失礼します!!!!っ」






レギュラスは勢いよく頭を下げると一目散に図書館から出ていった。
そんな彼の背中を不思議そうに見つめた。





『また逃げられちゃったな...』






















オマケ★



あぁ...あんなの反則だ
いまだ収まぬ心臓の辺りををぎゅっと握りしめる。
反射的に帰ってきてしまったが



(たくさん先輩と、お話するチャンスだったのに...)



つくづく自分は駄目だと泣きたくなったレギュラスであった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ