superjunior(キュミン)

□ご褒美はいちごミルク味
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「ヒョク〜・・・・」

こういう・・・・甘えた声で名前を呼んでくるときのソンミンヒョンは要注意だ。
やっかいなことを頼んでくるときにこういう声を出す。
俺は振り向かないで、知らない顔をした。

「ヒョク」

耳元で名前をそっと呼ばれる。
甘い甘いミルクみたいな声で呼ばれて、背筋がぞぞっとする。

「なんだよ」
「この前のいちごミルク味・・・美味しかった?」
「美味しかったよ」
「良かった」

満面の笑顔を浮かべて、俺の隣に座る。
子犬みたいな瞳を潤ませて、俺を上目使いに見てくる・・・。

ヤバい。

絶対ヤバいって。
なんか面倒なもん、持ってそう・・・・。


俺は警戒してソンミンヒョンから視線をそらそうとするけど、目をそらすとこそらすとこに
視界に入るように動いてくる。
もう・・・なんだよ。
聞きたくないよ。
だって、絶対面倒な事頼んできそうだ。


「ヒョク・・・」
「な・・・なんだよ・・・」
「お願いが・・・・」

やっぱり!!!!

「無理無理!絶対無理!」
「まだ言ってないし・・・」

ぷぅっと頬を膨らませるソンミンヒョンには悪いけど、俺・・・忙しいんだよ。
暇そうにしてっけど、忙しいんだよね、これでも・・・。

「ヒョク・・・いちごミルク・・・美味しかった・・・よね?」

うっ・・・と言葉に詰まる。
あのアイスがこんな所でネタになるなんて・・・。
あの日は暑かったんだよ。
アイスが食べたかったんだよ。

アイスを買って帰って来たヒョンの顔はすっごく晴れやかで、出て行った時にあった
陰りが全然なかった。
一緒にキュヒョンも帰ってきて、今まで一緒だったのかどうかわからないけど、なんか二人
良い雰囲気だった。
いつも一緒に行動してるわけじゃないけど、キュヒョンの奴、ソンミンヒョンがちょっと調子悪そうにしてたり、
元気なさそうな時はそばにいるんだよな。
なんかセンサーでもついてんのか?

笑顔でいちごミルクのアイスを手渡された。
ヒョンの笑顔につられて俺も笑顔になった。
あの時のいちごミルク・・・美味しかったんだよなぁ。
いつもと同じお店で買ったいつもと同じいちごミルクだったのに。
なんでかすっごく美味しかった。

そんなことを思い出してると、ソンミンヒョンがにっこり笑って言った。

「お願い、ヒョク。ちょっと幼稚園で一緒に唄ってくれない?」
「はぁ!?」

***

連れてこられたのは宿舎から少し離れた場所にある幼稚園。

なぜか俺は幼稚園児の前に立っている。

「こんにちはー!ウリヌン シュポジュニ オエヨ!」

ポーズを決めて歓声を上げるのは、先生とそのお母さんたち・・・。
肝心の園児はポカーンと見てる。

いつもと勝手が違うステージに困惑してるのは・・・俺だけ?
と、思ってメンバーをチラ見する。

ドンヘもヒチョルヒョンも園児に手を振ってお愛想してる。
キュヒョンは相変わらずニヒルな笑顔を浮かべてる・・・。
カンインヒョンは威圧的に笑ってる・・・。
イェソンヒョンとリョウクは、まぁ・・・・いつも通り。

そして、ソンミンヒョンは天使みたいな笑顔全開で司会してる。

俺だけ?
俺だけがこの場に溶け込んでないのか?

ソンミンヒョンに頼まれてOKしてからすぐにドンヘに泣きついた。
頼む!一緒に出ようって。
あっさりドンヘはOKして、それを聞いたヒチョルヒョンとカンインヒョンがついて来て・・・。
トゥギヒョンとシンドンヒョンはバラエティの撮影があって行けなくて残念がってた。
シウォンはドラマの撮影で元々いないし。
結局メンバーの半分がこのステージに立ってる。

幼稚園のステージに!!!!!

いつもならトゥギヒョンが前に出て司会をするんだけど、今日はソンミンヒョンが司会。
一生懸命、戸惑い気味の園児に向けて優しくわかりやすく話してる。
ヒョン・・・保育士さんに向いてるんじゃない?

なぜか来る前に練習させられたポロロっていうアニメの歌を最初に歌って、ようやく自分たちの
持ち歌を歌った。
だんだん園児がノッてきてくれて、だんだんこっちもノッテくる。
いっつもさ、曲の途中で掛け声かけてくれたり黄色い声援が飛んでくるんだけど、今日はそういうの
一切ない。
俺たちの歌と踊りで、キーキーキャーキャー騒ぐ子供の声だけ。

なんかおもしれ〜。

子供に戻ったみたいだ。
自分もガキの頃、わけもわからないでアイドルの踊りマネてやったりしたっけ。
それから、ダンスっておもしろいってなったんだっけ・・・。

この中から、将来俺たちみたいなアイドルを目指してくれる子・・・いたら良いな。

何曲か踊って、最後はソンミンヒョンがギターを弾いてキュヒョンが歌った。
誰の曲だっけ。
ソンミンヒョンのギターとキュヒョンの歌声が小さな体育館に響く。
マイクを使わなくたって後ろまで十分聞こえるぐらいの小さな子どもたちの体育館に
二人の声だけが流れている。
時折目を合わせながら、二人でしゃべるように、願うように歌う姿にわけもなく俺は感動した。

なんだよ・・・ソンミンヒョンとキュヒョン・・・。
泣けてくるじゃん・・・。

ソンミンヒョンの肩にそっとキュヒョンが手を置く。
その仕草にヒョンが小さく微笑む。

綺麗だなって。
いつも見てる二人だけど。
ただ単純に思った。

二人にはどんな景色が見えてるんだろう・・・。

歌い終わって、二人は頭を下げた。

「ありがとうございました」

今日のステージが、園児の心に残ると良いな。
俺は多分・・・一生忘れないよ。


終わってソンミンヒョンがメンバー一人一人にお礼を言った。
多分、ここで歌うことを事務所に許可してもらうの大変だったと思う。
俺はただついてきただけだけど。
でも、ついてきて良かった。
誘ってくれてよかった。

「ありがとう、ヒョク。」

ソンミンヒョンが言う。

「楽しかったよ、ヒョン」
「そう言ってもらえて嬉しい。」

ヒョンは俺の言葉に嬉しそうに笑ってくれた。

「そうだ。ヒョクにお礼・・・しなくちゃね」
「え?」
「今日一緒に来てくれたし。」
「ああ・・・もうもらったから良いよ」
「??」

首をかしげるソンミンヒョンに俺は言った。

「ご褒美にいちごミルク味もうもらったからもう良いよ」

ってね。

あの日のいちごミルク味は、今日のご褒美だ。
ソンミンヒョンがくれた甘い甘いいちごミルク味。

きっと、忘れられない味になる。


END

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