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□夜蝶に捕らわれて
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先輩はどこかの空き教室に入り足を止めた。
「せっ先輩…?」
先輩は息を整えると、くるっと向き合う様に俺を見た。
「・・・」
「一体どうしたんですか?」
無表情で俺を見ていた先輩は、俺の声にピクッと反応した。
そして・・・
「っ!!?せっせせ、せっ先輩?!」
「・・・」
一体全体何がどうなってんの!?
なっななな何で先輩が俺を抱きしめちゃったりしてんのぉ?!!
慌てふためく俺をよそに、先輩は腕の力を強めた。
「せっ先輩ってば…!」
「・・・」
とにかく放してもらおうと、
説明してもおうと思って声を掛けるも先輩からの返事はない。
力を緩めてくれる様子もない。
かといって、それ以上何かしてくる気配もなかった。
何があったのか分からないが、先輩はどこか必死だった。
そして、訳も分からず連れて来られ、訳も分からず抱きしめられてる俺も・・・
だから・・・・・・・
その光景を誰かに見られているなんて………気付きもしなかった。