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□兄弟は大変です。
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夜の喧騒が街を静かに取り囲み始めた頃。
時刻は、人々が眠りにつきかかっているであろう時間に差し掛かかっていた。
閑静な住宅街が立ち並ぶ、何処にでもあるような街並みとは別に月は妖しげに光っている。
周りからは世の中の音という音が消え去ったかのようにしんとした冷たさだけが取り残されていた。
夜中の十二時過ぎだと思われる時刻。
都会から密かに隔離された街の静けさが辺り一面に広がっておりなんとも言えない不気味な雰囲気を醸し出していた。
うっすらとして靄がかかったような存在感を思わせる、嫌な空気の街の中にその家はあった。
街の様子とは裏腹に幸せそうな暮らしを想像させる優雅な一戸建ての建物。
そこに、慎ましくもささやかな幸せを望んでいる家の主が一人、小さな部屋の隅で蹲るように眠っていた。
何処にでもいるような日本人特有の黒髪と深緑色の混じった髪はみるものの視線を奪うほど透き通っていた。
瞳は紫一色で統一されており、その瞳は閉じられたまま青年は静かに眠りについていた。
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