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□兄弟は大変です。
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青年はすやすやとやすらかな眠りに身を任せている。
しかし、ふいに穏やかな寝顔を仰向けにしたかと思うとソファの上で苦しげに顔を歪ませた。
「っ…………?」
悪夢にうなされたのか、何者かの気配を感じたのか、青年は静かに目を覚ますと、心許ない表情で辺りを見渡した。
暫くキョロキョロと周りを見回していたが、自分の周りに人が居ないことを確認すると、安堵の溜め息をゆっくりと吐き出した。
見た目にはまだ若さを残した顔立ちに、静かさと強さを兼ね備えた瞳が印象的な横顔をしている。
青年は一人静かに、物憂げな顔をしたかと思うと、まだ眠気の覚めないであろう足取りで、台所へと向かった。
ふらつきながら一つ一つの動作に、気だるさを見せつつ、その動作がどこか優雅に見えるのは中性的な容姿と不思議な雰囲気のお陰か。
容姿端麗とまではいえないまでも、すらっと伸びた背丈や短く刈り上げた髪型、線は細いが弱々しいほどではなく、程よい筋肉質の体が青年を男であるとを証明しているのだがそれらとは不釣り合いなほど、中性的な雰囲気を同時に併せ持っている為、青年の顔色から感情を読み取るのは中々に難しかった。
何をするでもなく台所でぼっーと佇んでいる青年は、上の空といった感じで呆けている。
時刻は夜中の十二時を過ぎているにも関わらず先程からこの家には生活音というものが存在していなかった。
つまり、この青年以外今は家に誰もいないのである。
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