novel

□愛が途切れるまで。
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「千代、今日は合コン付き合ってくれるんでしょうね」
「だめ、これからバイトだから」
「え?また増やしたの?」
「うん、コールセンターのスタッフね、時給がちょっといいんだよねぇ」
「え、今何個バイトしてるの?」
友人言葉に指折り数えてみる。
「四つかなぁ?」
青春を棒に振ってると叩かれたが、私は荷物をカバンにつめて帰る支度をする。
「阪柿教授のとこ寄ってきなよ〜なんかすっげー文句言っていたレポートがどーのって」
「行きたくないけどそうするわ…それじゃ!行ってきます!」
千代は教室を駆け出して行く。
大学生になって、歩けるようになった足。
何処へでも自分で行ける喜びを感じた。
その頃には及川徹は遠い存在になっていた。
最初にまず連絡がつかなくなって、次に実家に行けば一人暮らしを始めたと聞いた。
そりゃそうか、と思いやっとのことで振り切った。
忘れなきゃいけない。
駆け足で構内を走る。
面倒な教授のお説教を聴き終え、再び大量の課題を押し付けられクソ親父と内心思いながらカバンに押し込み走っていく。
低いヒールをカツカツカツと鳴らして歩くのが私はかなり好き。
歩けるようになってから益々、あまり走りすぎると足が痛むのはあるけど、歩き疲れ走り疲れる感覚は嫌いじゃない。
大学にめったにいないことから友人には単位単位と毎日連絡が来る。
分かってはいてもバイトを優先してしまう。
地元から離れたこの場所は殆ど、見知った顔は見かけない。
時々、日向や澤村くんが遊びに来てくれるけど…おもてなしもできず申し訳なく思う。
昼間はバレーの講師をして、夜はコンビニやジム、コールセンター、休みの日は肉体労働に費やして貯金は二年で結構溜まっていた。
最近はそれを見るのが楽しくなったぐらいで、忙しい毎日をしていた。
バレーをしていると自分の体がまだ上手く動かないのを実感する。
前には日向と日向の友達と誘われて練習試合に参加したが、前ならもっと男子に混ざっても平気だったのにしんどくなっていた。
体力がついていかない、それが怖くて。
バレーから離れて行くのが怖かった。
 

 多分。バレーから離れることが私にはとても最善なのだろうけど、離れられないのは徹を忘れられないからだろう。
ふと足を止める。

「千代」

呼びかけられ、顔を上げるとそこには懐かしい人が立っていた。
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