小説部屋

□チョコレート聖戦・番外編
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バレンタインの夜。

ネルは一人、朝に仲間の前から姿を消したまま戻ってこないアルベルを探し、シランドの街を歩いていた。

寝静まった静かな街にネルの足音がコツコツと響く。

やがてネルは街の東部にある美しい川辺、そこに座って佇んでいるアルベルの姿を見つけた。



「こんな所にいたんだね」

「…何の用だ」

「何のって…あんたがいつまで経っても戻らないから探しに来たんじゃないか」

「フン、ご苦労なことだな」

アルベルはそっぽを向いたまま、ネルを見ようともしない。

ネルはそんなアルベルの隣へ腰を下ろした。



そうして二人で黙り続けたまま、どれ位の時間が経っただろうか。

「ねぇ、あんた…ひょっとして朝のことで拗ねてるのかい?」

「!! んなわけねぇだろう、阿呆が!」

「あのさ、そのことなんだけど…」

「分あってるよ…アレは世話になった奴や好きな奴に渡すモンだから、俺には渡せねぇってことだろ」

「違う、そんなことを言ってるんじゃ…」

「それはお前にとって俺が憎むべき対象だから、か?」

否定するネルの言葉を遮り、アルベルの口調はだんだん強くなる。

「だから、違うって言ってるだろう!」

それを先程よりさらに強く否定するネル。

それでもアルベルのやるせなさは止まらない。

「違わねぇよ!お前は俺が憎いんだろうが!だったら…」
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