小説部屋
□あなたへ感謝と愛情を。
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『だから、あんたが気にすることじゃないんだよ』
あの時のあなたの言葉が、罪悪感という鎖で縛られた僕の心を解き放ってくれた。
同時に、あなたに対する僕の気持ちも―――
シランドの街中。
フェイトは遠くに見慣れた赤い髪を見つけ、その持ち主の名前を呼びながら駆け寄った。
「ネルさん!」
名前を呼ばれた赤い髪の女性は、声が聞こえた方へ振り返る。
遠くからでもはっきり見える、短めの赤髪がさらっとなびいた。
「フェイト…どうしたんだい?」
「あの…ネルさん。え〜と、その…」
フェイトは何か言いたそうに口をもごもごさせている。
そんなフェイトの様子を見て、ネルはふっと笑って。
「はっきりしないね、いいから言ってごらんよ」
そんなネルの表情を見てフェイトは少し顔を赤らめ、そして意を決めたかのように軽く咳払いをした。
「ネルさん…ごめんなさい!!」
「…え?」
ネルは混乱した。
フェイトから頭を下げて謝られる理由にまるで心当たりが無かったからだ。