小説部屋
□雨
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女性は雨の中立ち尽くす。
女性の青い髪から滴り落ちる滴。
顔を打つ雨粒は女性の目に浮かぶ雫と溶け合い、落ちていく。
ザァァァァァ
―――雨は好き。
雨は全てを洗い流してくれそうだから。
涙も悲しみも憎しみもすべて雨に流せたら―――!!
「マリア!」
後ろから女性―マリアは名前を呼ばれ、振り向く。
そこには傘を差した、マリアとよく似た青い髪の青年が立っていた。
「…フェイト…」
マリアはその青年の名前を驚いた様子で呟く。
「どうしたんだよ、こんな朝早くに」
「…散歩よ」
「…傘も差さないで?」
「たまには雨に濡れたい時だってあるのよ。
悪いけど…今は1人にして」
そう。
だから今の私に触れないで。
弱い私に気づかないで。
…あなたにすがってしまいそうだから。
私にはあなたにすがる資格なんて無いの…
だって私は―――
「…泣いていたのか?」
フェイトの口から発せられたその言葉を聞いた瞬間、マリアの体がビク、と強ばった。
「あ、ごめん、その…マリアが迷惑じゃなかったら、僕に話してくれないかな?
僕にしかわからないこともあるだろうし…」