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□ああ、おいしそう
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「名前さん、好きな食材ってありますか?」

ニコニコと笑みを浮かべて近付いてきたルーシーちゃん。
彼女の質問は、私の好きな食材について。

「…うーん、食材?」
「はい、食材です。例えば、きのことかフルーツとか」

食材…食材…、なんだろうなあ。
野菜は取り分け好きじゃあないし。魚…もそうでもないし。

お肉………。

………あ、


「日頃の感謝も込めて、名前さんに美味しい料理を作ってさしあげたいと思いまして」


モジモジと少し照れながら言う彼女の顔を見て。

不覚にも、大好きな食材を一つ思いついてしまった。


「…………」
「…?どうかなさいましたか、名前さん」


私の好きな食材…。
脂身の少ない、それでいてジューシーな……。

…いやいや、ダメダメ!絶対ダメ!!
そんなの彼女に言えるわけない!!


「…甘い、フルーツかなあ。モモとか大好きかも!」

…仕方がないから、咄嗟に嘘をついて誤魔化した。
確かにモモも嫌いじゃないけど。


「そうですか!それじゃあ早速、モモを使ったお菓子のレシピを考えなくっちゃ」
「やったあ!楽しみにしてるね」
「ふふっ、名前さんのために頑張っちゃいますよぅ!」


それでは、と手を振り、トコトコと去っていくルーシーちゃん。

…その後ろ姿を見ると、不意にお腹が鳴った。



「ご、ごめん…ルーシーちゃん…」

友達をこんな目で見るなんて最低かもしれない。

ああ、でも、貴女。
すごく美味しそう。



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