王女の灰色の夢物語
□1話〜狙われた少女〜
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「はぁはぁはぁっ」
(どうしてだろう?
何がどうしたらこうなったんだ?
私はただ、静かに暮らしたかった……。)
暗い路地裏を少女は、息を切らしながら走っていた。
全速力でずっと走り続けているのだ。
あまり体力がない彼女に限界はすぐ訪れた。
それでも走り続けていたら、だんだん意識が朦朧としてくる。
何故彼女はこんなにも必死で走っているのだろうか。
その答えは彼女の後ろにあった。
球体の形をした恐ろしいもの。化け物だ。
そいつは、少女を狙っていた。
銃弾で撃ち殺そうとしているが、少女は隠れる場所が多く逃げやすい路地裏を走っていたため、今まで逃げ切れていたのだ。
逃げ切る方法を一生懸命頭で考えているが何も浮かんでこない。
残った選択肢は3つだった。
1、戦う
しかし、これは負けて死ぬのは目に見えているので全力で却下だ。
2、逃げ続ける
これが妥当だとは思うが体力の限界だ。
このまま追いつかれて死ぬだろう。
一応候補には残す。
3、助けを求める
論外。
まず、この路地裏には人がいない。
いても死体。
ここは治安が悪く、こういう路地裏では人が死ぬのは日常茶飯事だ。
死の理由は多々あるが、今説明する余裕はない。
だいたい、こんな化け物と死を覚悟で戦ってくれて私を逃がしてくれる善人がいるとでも?
いたとしても、最悪に治安が悪いこの町の路地裏ではありえない。
結局、2の選択肢で逃げるしかない。
だが、このままでは確実に死ぬ。
何か解決策を……。
何もない!
(私、ここで死ぬのかな……いやだな)
半ばあきらめた彼女は死を本気で覚悟した。
(もう、あきらめよう。潔く死んでお母さんとお父さんの所へ逝こう)
彼女が足を止めようとした時だった。
ドーンッ
「え!?」
突然、遠くの方で爆発音がしたのだ。
(何この爆発音……?誰かが爆弾でも使った?いいえ、いくら治安が最悪の町でも、そんなことはしないでしょ)
彼女を追っていた球体の化け物は振り返り、少女に目もくれず爆発音のした方へ飛んで行った。
(た、助かった……?)
おかげで、少女の命は助かった。
その場にへたりこむ少女。
「つ、疲れたぁ〜」
荒い息を整えながら、ホッとする少女。
恐怖から解放され猛烈な疲れが襲ってくる。
しかし、あの化け物がいつ戻ってくるかもわからない。
早々に身を安全なところへ隠し、休む必要がある。
(……死にたくない)
一度は死を覚悟した彼女だが、本心では生きたかったのだ。
彼女は小走りで身を隠すところを探し始めた。