王女の灰色の夢物語

□3話〜少女とアクマ〜
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【アレン視点】


「えっ同い年!?」

彼女が僕に年齢を聞いてきたので素直に答えた。

どうやら、自分よりも年上だと思っていたらしい。

「髪が白いから年上に見えるのかな……?」

僕の悩みはこの髪の色だ。

よく老人に間違えられる(泣)

「アレンは落ち着いてて大人っぽいから、どうしても年上に見えるの」

苦笑をする彼女。



アクマを追って行ったリナリーを探したいが、彼女を一人で放っておくわけにはいかない。

はぐれた時は宿で待ち合わせになっているから、一先ずは僕らが泊まる宿に向かう。

そこで、彼女を休ませてから考えよう。

「考えもなしに拾ってきて」ってリナリーに怒られそうだけど……。

宿に向かう途中、無言なのは空気が重いので自己紹介をはじめることにした。


「冬咲さんは東洋人ですよね?」

「うん、日本人なの。…あ、小雪でいい。同い年だし。私もさっきアレンって呼んだから」

日本人か……むかつく奴を思い出す。

けど、小雪は一緒にいると癒される。

癒しオーラが出ている。


「アレンは……イギリス!」


「よくわかりましたね。正解です」

そういうと、嬉しそうに少しだけ笑う。

話を続けていくうちに、打ち解けてきた。

どうやら彼女は極度の人見知りらしく、あまり人と接しないらしい。


「じゃあ、好きなものは何です?」

僕が質問すると慌てながらも答える。

オロオロする姿が可愛らしい。

絶対に癒しオーラが出ている。


「えっと、…あ、甘いもの!」

「甘いものは僕も好きですよ」

なかでもみたらし団子が好きだと言うと、彼女は顔を輝かせた。

「同じっ」

どうやら、好物は一緒らしい。



彼女の無邪気な笑顔を見ていると、こっちまで嬉しくなってくる。

もっと、笑ってほしい。

そう思いながらも話の輪を広げていった。







夜も更けてきたころ、やっと宿に着いた。

小雪を見つけた時は日が落ちる前だったのに、この時間の経過はいったい何なのか。

「同じ道ずっと歩いてたね」

「すみません、迷子になって……」

そう、僕がずっと迷ってたのだ。

宿の場所を知らない小雪に頼るわけにもいかず、自力で宿に向かおうとしたけど無理だった。

結局何とかたどり着いたころには真夜中という……。

いい加減この方向音痴も直さないといけない。

「ここがアレンの言ってた宿?」

「はい、ここで僕の同僚と待ち合わせなんです」

小雪は考える素振りを見せ、そして僕に質問した。

「まだ聞いてなかったけど、アレンはどんな仕事をしているの?」



うっ…。

アクマを破壊することとか言っても信じてもらえないし、なんていえばいいんだろう?


「……えっと――――――――」




バンッ



突然宿のドアが開いた。

そこから出てきたのは、長い黒髪を二つに高く結んだ少女。

リナリー・リーだ。



「か、帰ってたんですかリナリー」

若干笑顔が引きつっているなとわかった。

「……アレン君の事だから何かに巻き込まれて、アクマを追えなかったんでしょう?」

図星です。

さすがリナリー。

「実は、巻き込まれたというより拾いものをしたというか……」


リナリーは困惑する。

「拾い物?」

僕はリナリーが出てきた瞬間、僕の後ろに隠れた小雪を引っ張り出す。


「あっ……」


僕によってリナリーの目の前に引っ張られた小雪は人見知り発動。

あ、涙目になってる。

少し強引すぎたかな。


「この子が拾いもの?」


「いったいどういう経緯で?」という視線を送ってくるリナリー。


「彼女の名前は冬咲小雪。どうやら家が無く、何者かに追われていたようでしたから保護したんです」

リナリーは少し考える素振りを見せ、「わかった」といった。


「……下手に置き去りにして、あいつらの餌食にされたら可哀想だわ。それに家が無いなら私たちが用意するっ」


へ?


リナリーの言葉に言葉を失った。

「よ、用意ってどうやって?」

「教団の力を駆使して」


あ、そういう……。

いいのっ!?


にこにこ笑いながら教団を利用する気満々のリナリーに、背中にゾッとしたものが這った。


リナリーは怖い笑みを止め、優しい笑みに戻った。

リナリーは自分より10センチほど背が低い小雪の顔を覗き込んだ。


「えっと…小雪ちゃん、私はリナリー。よろしくね」


リナリーのあの笑顔を見たら、小雪も警戒をなくすかと思ったけど……。

小雪は依然としてリナリーにも人見知りを発動中。


「………………よろしく」


おずおずと手を差し出した小雪はきっとまだリナリーに怯えていたのだろうけど、それでも友好の握手をしようとした。


成長したな……。と安心する僕。

……僕の気持ちが保護者になっていた。

どうしよう苦笑いしか出てこない。


「二人とも、夜は冷えますから宿の中へ入りましょうか」

握手を交わした二人は顔を見合わせて笑った。


きっといい友達になれるよリナリー、小雪。
 

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