王女の灰色の夢物語
□1話〜狙われた少女〜
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―――――時は10分前にさかのぼり、場所も変わる―――――
人がにぎわう表通り。
そこに目立つ格好をしたものが二人。
一人は長い黒髪を二つに高く結い上げる可愛らしい美少女。
もう一人は白髪だが、老人ではない。少年だ。
二人とも黒い団服を着て、表通りを歩いていた。
話をしているようだが、男女の甘いムードとかそんなのは無く仕事の話をしていた。
黒髪の少女はリナリー。
白髪の少年はアレンという。
二人ともエクソシストだ。
任務のためにこの町に来た。
「アレンくん、今回の任務どう思う?」
リナリーはアレンに問う。
「どうって、わからないことだらけですよ」
アレンは難しい顔をしながら答えた。
今回の二人の任務は以下の通りだ。
≪治安の悪いところで有名なダンプタウン。そこに、アクマが集まっている。詳細は不明。エクソシスト二名は事の詳細を究明すること。アクマは破壊。イノセンスがある可能性も考えられる。イノセンスがある場合は回収せよ≫
「こんなあやふやな任務って……ハァ」
肩を落としながらため息をつくアレン。
「ま、まぁこういう任務もあるわよっ。元気出してがんばりましょ!」
アレンを励ましながらリナリーはほほ笑む。
苦笑いをするアレンは異常に気付く。
アレンは振り返り人混みを見つめる。
「……向こうの方、騒がしいですね」
どうやら何かあったらしい。
人混みをかき分けながらその中心へとたどり着く二人。
「………これは、喧嘩?」
目の前にはなぐり合ってる男が二人。周りの人たちは喧嘩を囃し立てている。
(何で誰も止めないんだ?)
どちらが相手を殺すか賭ける者までいる。
リナリーはアレンの様子を見て心中を察したのだろう。
アレンに声をかける。
「アレンくん、ここは治安が最悪の町ダンプタウンよ。他の町と比べちゃいけないわ。人が死ぬのは日常だし、殺し合いなんかしょっちゅうよ」
かくいうリナリーもあまり気分はよくなさそうだ。
本当は止めたいが、厄介事になり任務が滞るのはさけたい。
それがわかっているアレンは再び歩き出した。
「……行きましょうリナリー。アクマが発生した場所ってどこでしたっけ?」
「アクマは確か、表通りの方で出たらしいけど……」
最後の方は声が小さくなっていく。
「どうしましたリナリー?」
リナリー周りを見渡す。
「……変ね、ファインダーがいないの。詳しいことはファインダーが説明してくれるのに、待ち合わせ場所にいないの」
「リナリーその待ち合わせ場所はどこですか?」
「ここよ」
アレンは重々しい表情で辺りを歩き回る。
すると、アレンの左目が反応した。
「アレンくん、もしかしてアクマ!?」
「ええ、どうやらそのようです。僕の考えはできればはずれてほしかったのですが……」
リナリーは瞬時に理解した。
(待ち合わせ場所にいるはずの人たちがいなくて、近くにアクマの反応。それはつまり……ファインダーの人たちがアクマに殺されたということ)
リナリーは唇を噛み締めた。
(ごめんなさい。助けられなかった)
アレンも同じようにこぶしを握り、震わせながら心の中で亡きファインダーに謝罪をしていた。
そして、左目のアクマの反応が強くなった。
「リナリー!アクマが来ますっ」
「アレンくん、行くわよ!」
『イノセンス発動!!』
二人がイノセンスを発動させた瞬間、level1のアクマが数体現れ二人を攻撃した。
戦闘が開始された。
ドーンッ