王女の灰色の夢物語

□1話〜狙われた少女〜
2ページ/2ページ


―――――時は10分前にさかのぼり、場所も変わる―――――


人がにぎわう表通り。

そこに目立つ格好をしたものが二人。

一人は長い黒髪を二つに高く結い上げる可愛らしい美少女。

もう一人は白髪だが、老人ではない。少年だ。

二人とも黒い団服を着て、表通りを歩いていた。

話をしているようだが、男女の甘いムードとかそんなのは無く仕事の話をしていた。


黒髪の少女はリナリー。

白髪の少年はアレンという。

二人ともエクソシストだ。

任務のためにこの町に来た。


「アレンくん、今回の任務どう思う?」

リナリーはアレンに問う。

「どうって、わからないことだらけですよ」

アレンは難しい顔をしながら答えた。

今回の二人の任務は以下の通りだ。


≪治安の悪いところで有名なダンプタウン。そこに、アクマが集まっている。詳細は不明。エクソシスト二名は事の詳細を究明すること。アクマは破壊。イノセンスがある可能性も考えられる。イノセンスがある場合は回収せよ≫


「こんなあやふやな任務って……ハァ」

肩を落としながらため息をつくアレン。

「ま、まぁこういう任務もあるわよっ。元気出してがんばりましょ!」

アレンを励ましながらリナリーはほほ笑む。

苦笑いをするアレンは異常に気付く。

アレンは振り返り人混みを見つめる。

「……向こうの方、騒がしいですね」

どうやら何かあったらしい。

人混みをかき分けながらその中心へとたどり着く二人。

「………これは、喧嘩?」

目の前にはなぐり合ってる男が二人。周りの人たちは喧嘩を囃し立てている。

(何で誰も止めないんだ?)

どちらが相手を殺すか賭ける者までいる。

リナリーはアレンの様子を見て心中を察したのだろう。

アレンに声をかける。

「アレンくん、ここは治安が最悪の町ダンプタウンよ。他の町と比べちゃいけないわ。人が死ぬのは日常だし、殺し合いなんかしょっちゅうよ」

かくいうリナリーもあまり気分はよくなさそうだ。

本当は止めたいが、厄介事になり任務が滞るのはさけたい。

それがわかっているアレンは再び歩き出した。


「……行きましょうリナリー。アクマが発生した場所ってどこでしたっけ?」

「アクマは確か、表通りの方で出たらしいけど……」

最後の方は声が小さくなっていく。

「どうしましたリナリー?」

リナリー周りを見渡す。

「……変ね、ファインダーがいないの。詳しいことはファインダーが説明してくれるのに、待ち合わせ場所にいないの」

「リナリーその待ち合わせ場所はどこですか?」

「ここよ」

アレンは重々しい表情で辺りを歩き回る。

すると、アレンの左目が反応した。

「アレンくん、もしかしてアクマ!?」

「ええ、どうやらそのようです。僕の考えはできればはずれてほしかったのですが……」

リナリーは瞬時に理解した。

(待ち合わせ場所にいるはずの人たちがいなくて、近くにアクマの反応。それはつまり……ファインダーの人たちがアクマに殺されたということ)

リナリーは唇を噛み締めた。

(ごめんなさい。助けられなかった)

アレンも同じようにこぶしを握り、震わせながら心の中で亡きファインダーに謝罪をしていた。

そして、左目のアクマの反応が強くなった。

「リナリー!アクマが来ますっ」

「アレンくん、行くわよ!」


『イノセンス発動!!』


二人がイノセンスを発動させた瞬間、level1のアクマが数体現れ二人を攻撃した。

戦闘が開始された。





ドーンッ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ