王女の灰色の夢物語

□2話〜少女は出会う〜
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【アレン視点】


風が吹く。

「さむっ」

思わず身体を強張らせる。

秋でも、夜は寒いなぁ。

もう、夕暮れだし。

足を出してるリナリーなんかもっと寒いだろうなぁ。

あ、でもさっき体を動かしたから(主にリナリーが)あんまり寒くないのか。



アクマとの戦闘で大きい爆発音が鳴ってしまったから、野次馬がくるだろう。

それにlevel1のアクマを一体逃がしてしまった。

被害が出る前に急いで破壊しなくては。

「逃がしたlevel1の行った方に急ごう、アレンくん」

リナリーも同じ気持ちだったみたいだ。



リナリーはダークブーツを使って、高速でアクマを追う。

僕はリナリーみたいに空飛んだり速く走ったりはできないから、リナリーの見落としがないように確認する。


「アクマはいないみたいだけど……」

なんだろう?人の気配がする。

それも小さい?

こういう路地裏ではホームレスがたくさんいそうだけど、さすがに子供はいないだろう。

でも……。

どうしても気になったから辺りを探索することにした。

すると、ガタンッと音がした。

振り返ると、木の板が倒れていた。

そして、女の子がいた。



……は?



いや、木の板の裏に隠れていたことはわかる。

でもなんで隠れていたんだ?

僕は一応は人間に見えるし、神田みたいに怖くはない。



なのに、その子はひどく怯えていた。



そして、ワンピース一枚という見ているだけで身震いがしそうな格好だった。


「と、とりあえずコートを貸しますから怯えないでくださいっ」


手をあげて何も持っていないポーズをする。

少女は僕の反応を見ながらゆっくり近づいてくる。


やっと、僕の前に立った少女にコートを貸してあげた。


「……ありがとう」


おそらく、身長は150ぐらい。

真っ黒な長い髪に、漆黒の瞳。

それに不釣り合いなくらい真っ白な肌。

四肢は細く、折れてしまいそうだ。

顔立ちからして東洋人。

服は無地の黒いロングワンピース一枚。

木の板の裏に隠れていた。

何かに怯えていたようだが、それはまだ不明。

寒そうだったため、とりあえずコートを貸してあげる。



と、現状を整理するとこんなもんか。


「えっと、名前を教えてくれますか?」

少女はじーっとこちらを見つめるだけ。

かなり警戒している。

こんな人気のないところであたりを探し回っていたのだから、危ない人だと思われているんだろう。


「僕はアレン。アレン・ウォーカー。ここには仕事で来ていて道に迷ってしまったんです。途中で落とし物をしたことに気が付いてそこら辺を探し回っていたんですが、驚きました。こんなところに人がいたなんて」

ニコッと笑う。


少女の警戒心がかなり薄らいできたようで、表情に柔らかさが戻ってきている。


「……私は、冬咲小雪。…怖い人に追いかけられていて、隠れてた。そこにあなたが来た」


怖い人……治安が悪い町だ。人身売買の奴らや、イカれた奴がこの冬咲小雪という少女を追っていたんだろう。


僕とあまり変わらない年の子だ。

こんな女の子が理不尽に怖い目に……っ



「大丈夫。僕が家まで送ってあげます。だから安心してください」

アクマを追わなきゃいけないけど、もしかしたらアクマがこの子に目を付けるかもしれない。

この子を追っていた人たちも、なるべく懲らしめた方が……。


っと、あんまり黒いことを考えるな僕。

だんだん野蛮になってる。

師匠に似たかな……?


「気持ちは嬉しいけど遠慮しとく。私には帰る家がないから」


寂しそうに悲しそうに少女は言った。

それが大きくアレンの心を揺さぶった。

かつて自分は親に捨てられ、帰る場所がなかった。

マナのおかげで今の僕がある。

孤独のつらさは知ってる。

彼女の目は絶望に染まっていた。

きっと何かあったんだろう。

「じゃあ、君の帰る場所が見つかるまで送ってあげます」


「……っ」

彼女は勢いよく顔をあげた。


「……あ、それ…本当?」


「はい。……以前僕も帰る場所はありませんでした。だから、放っておけないんです」


ははっと僕は苦笑いをした。

「以前ってことは、今は帰る場所がある?」

「あります。生きていれば、必ず帰る場所ができます。僕だって帰る場所がないころはつらかったけれど、今は楽しいんです」


「そっか……私にもできるかな?」

「ええ、もちろん」


僕がそういうと、彼女は華のように笑った。


「……っ////」


やばい、僕の顔は今真っ赤だ。




きれいな子だな。冬咲小雪か……。
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