キスからインフェクション
□キスからインフェクション
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○喫茶店・夕方
数名の客で席が埋まる静かな喫茶店に、絢斗が小走りに入ってくる。
昴
「絢斗さん、こっちです」
昴が爽やかな笑顔で、手を挙げ呼ぶ。
絢斗
「悪い、遅れた」
昴
「平気です。ちょうど台本読んでましたから」
絢斗
「お、それ今度やるやつだな」
昴
「はい。絢斗さんと初共演なので、張り切っていきますよ」
絢斗
「おぉ……そっか」
昴の眩しい笑顔に、絢斗少し照れて。
昴
「絢斗さんは、俺の憧れですから」
絢斗
「……っ、おま」
絢斗、思わず水を吹き出しそうになる。
昴
「?なんです」
昴にきょとんとした顔で見つめられ、絢斗、赤面し。
絢斗M
「こいつの真っ直ぐなところ、キライじゃないが、
どう受け止めて良いかわからなくなる……」
絢斗
「……なんでもねぇーよ」
絢斗、わざと不貞不貞しく答える。
昴
「あ、照れってやつですね?」
絢斗
「……っ」
昴
「ふ…、かわいいです、絢斗さん」
絢斗
「……!お前、ちょっと黙ってろ、うるさい」
絢斗、メニューで、昴の頭をぽすっと叩く。
それでも昴、にこにこと嬉しそうに。
絢斗
「なんで叩かれて笑ってんだ」
昴
「え。俺、笑ってますか」
絢斗
「笑ってる。つか、ニヤけてる」
昴
「だって嬉しいんですよ、絢斗さんと会えたし」
絢斗
「……わかったから」
もう半ばあきれ顔で。
昴
「一緒の舞台も決まりましたし!」
ぐっとこぶし握り締め。
絢斗M
「大学の演劇部の後輩である桐島は、卒業後もなぜか俺を追ってきた」
回想で舞台稽古中の2人。
絢斗M
「演劇部の定期発表会での俺の演技に憧れた……とか、なんとか」
現在と変わらず、にこにこと絢斗の元に走ってくる昴の回想。
絢斗M
「まぁ、こいつの理由はどうだってよかった。
俺は部員の少なかった演劇部に誰か欲しかっただけだし」
昴
「がんばります。絢斗さんに褒めて貰えるように」
絢斗
「あー……うん、だな。がんばろうぜ」
絢斗M
「『いつか同じ舞台に立とうぜ』なんて安易に約束した俺が悪かったのか……。
とにかく桐島は、俺にべったりだ」
ちらりと昴を見ると、相変わらず人なつこい笑顔。
絢斗、照れて思わず目を逸らす。
絢斗M
「一体なんでこのイケメンくんが俺になついてくるのか、疑問でならない。
尻尾振って、好き好き付いてくるけど。
好きってマジじゃないよな?
ただ、憧れとか、兄貴みたいな感覚に違いない……」