短編とか
□時はときに、孤独さえも蝕む【三家 グロ・R-15】
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(…………)
嗚呼。あの時からか。
死を怖れるようになったのは。
今の私を見て、家康ならなんて言うだろうか。
叱咤するか?
それとも悲しむのか?
今はもう解らない。
でも。
私は其の答えを知っている。
「 生きろ 」
そう言うに違いない。
(私は死なない)
(否、死ねないのだ)
肉片から突き出たぬめりの残る白骨を、そっと指で撫でる。
なんて、汚い亡骸なのだろう。
「ごめ……なさ…い」
そんな言葉では済まされない事など知っていた。
あいつはこんな事など望んでいなかった筈だ。
こんな風に、歪んだ愛され方をしたくは無かった筈なのに。
「ごめんなさい……ごめん…なさい……っ」
うわ言のように繰り返した。
ぼろぼろと涙を零し、彼へか、自らへなのか、許しを乞うた。
これが、愛の末路なのか。
自分が招いた結果なのか。
でも。
大切な人を、三度も喪いたくはなかったのだ。
「………っ」
膿と汚物でぐちょぐちょになってしまった、腐りきった身体を抱き締めた。
その背中に、桜の花弁がひとつ。
終.
あとがき