短編とか
□時はときに、孤独さえも蝕む【三家 グロ・R-15】
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解っていた。
あいつが、とっくに死んでいた事くらい。
あの戦いの日に、私は家康を殺した。
確かに、殺したのだ。
そして、悟った。
こいつは私の大切なヒトだったのだ、と。
其れを、自ら手にかけたのだ、と。
その過ちを認めたくなくて、己に虚言を吐いた。
記憶を塗り替えた。
替えても替えても服を汚していたのは、滲んだ古血。
そもそも死んでいたのだ、動けないことなんて当たり前だ。
口なんて利ける訳が無い、会話さえ全て妄想だった。
家康の身体にも、私の精神にも、限界が来ていたのだった。
(嫌…嫌だ………)
共に死ねたら、幸せだったのだろうか。
今からでも、遅くはないだろうか。
そっと、刀を腹に宛てがった。
(死のう…死んでしまえば……)
「__………!」
その時、私は思い出した。
死に逝く刹那。
あいつの口の端から、血と共に零れた言の葉。
この世で一番嫌いなヒトから、この世で一番聴きたかった台詞。
本当の気持ち。
「あいして いた」