短編とか

□一緒が良いの。【家三 ほのぼの甘】
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その日、私はやっとの事で政務を片付け、それから鍛練をするか、昼寝をするかで迷っていた。
しばらくこれから戦は無い。
それに今は、普段あまり使わない頭を酷使した所為で至極疲れている。
…ああ、でも鍛練をしなければ腕が鈍ってしまう。秀吉様の遺したこの城を護れなくなるではないか!!

誠実な自分と、認めたくは無いが確かに其処に在る怠惰な自分。
其の二人が、静かに脳内で争う。

「………」
その時、背後の襖がかたん、と音を立てて開き、足音もなく何かが入ってくる気配を感じた。
だが、私はその正体を知っているのだった。
「…刑部」

「やれ、政務も片してしまったか」
「あぁ」

今だけじゃない。
刑部はいつも、「鍛練はおわったか」だの、「飯は食ったか」だの、「歯磨きはしたか」だのとしょっちゅう様子を伺いに私の部屋へ来るのだ。
まるで保護者。
…私はもうやや子では無いのに、だ。

「……」
まぁ、丁度良かった。
「…刑部」
「どうしやった」
「……これから貴様が、鍛練か昼寝をしようとしているとする。貴様なら、どちらを選ぶ」
鍛練か昼寝か、意見を聞くことにした。

……だが、こいつならきっと、…いや、絶対に。
「昼寝にしやれ」
後者を選ぶに相違無い。
刑部は、いつも食えだの休めだの煩いのだ。
彼は後者を選び、おまけでここぞとばかりに小言がついてくるオチだろう。
「…解った」
「やっと休むことを覚えたか、三成よ…われは感じいって泣きそうよ」
保護者か。
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