黒子のバスケ-長編-
□お正月。緑間と徠我とトラ吉と…
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※火神と黒子、徠我の関係はこの話の設定です。
「どうしましょう火神君…やっぱり病院に連れて行った方が…」
猫を抱いて火神の方へ歩いて行くと、黒子をビシッと指を差し火神は言った。
「stay黒子っ!いいか?絶対こっち来るな、来るならそのブサイクを置いて消毒してから来いっ!野良猫なんて徠我に近付けるんじゃねえっι(`ロ´)ノ」
「・・・まだ野良猫と決まった訳じゃないです」
どうやら火神君は、徠我君を箱入りにしたいようです。
【お正月。緑間と徠我とトラ吉と…1】
(なんなのだっ!?一体どうしたのだよっ?!)
今、緑間真太郎16歳は焦っていた。
何に?
この状況に。
(何故に火神が目の前に居るのだよっ!それよりも何故に火神はそんなにデカいのだよっっっ)
(黒子に持ち上げられ、挙げ句ぷら〜りぷら〜りと揺られ、あまつさえ、下を見れば足もシマシマの毛皮に股の間からは尻尾が見えているのだよ(゜ロ゜;・・・)
(何故に俺は猫なのだよ黒子ぉおおおっっっ)
緑間が訳の解らない出来事にうちひしがれていると、ふと火神が抱く徠我と目が合った。
(むっ…徠我か…相変わらず黒子にそっくりで、可愛いのだよ)
「か〜(かわいい?)」
首をこてんと傾けて、自分に問う姿は悶える勢いで愛らしい。
緑間に向かって、小さな手を伸ばそうと火神の腕の中でもぞもぞ動く徠我だが、それを火神が許す筈もなく…
「徠我、ダァメッ!お前は人猫、あっちは駄猫!ダーの言うことを聞きなさいっ」
「だぁ?(パパ)」
「そう、偉いぞ徠我!」
そんな様子を冷めたように黒子は眺めていた。
「困りましたね、火神君の“アレ”は…ったく過保護でいけません」と、心底ウンザリした様子で語る黒子を腕の中から見上げた緑間は、それは仕方ないのだよと思いつつ深い溜め息を吐いた。
『ぷふぅう』
「おや?トラ吉君もそう思いますか?見事な溜め息ですね(*^^*)すみません…徠我君の目が開いてからは特に、もう火神君たらベッタリなうえ、親バカ丸出しで過保護なんですよ」
バカ神ですよねぇと言い、黒子は優しく頭を撫でてくれた。
(それにしても“トラ吉”とはもしかしなくても俺の事か?お前のそのネーミングセンスはどうなのだよっ!)
いや、黒子も緑間には言われたくないと思っているだろうが、幸いな事に猫語が訳されることはなかった。
緑間の呟きは、火神や黒子には“にゃーにゃー”と猫が騒いでいるようにしか聞こえないのだから。
「にゃーにゃーにゃーにゃー煩ぇなっ(怒)」
「猫なんてそんなものでしょう、火神君」
「黒子、俺達の徠我は賢いぞ」
「はいはいそうでしたね」
さもうんざりとした表情で、黒子はトラ吉をシャンプータオルでふきふきし始めた。
緑間の呟きは猫語なので、もちろん周囲には鳴き声にしか聞こえない…が、流石と言うか徠我は猫なので緑間の呟きは丸解りであった。
ただ幼い故に人語に話せないだけで。
気が付くと、猫になり黒子に抱かれぷらぷら揺られていた緑間。
黒子曰く「火神君のお家に来る途中、倒れていた君を見つけたんですよ」だそうだ。
緑間には倒れていた覚えも、ましてや猫になった覚えも全く無い。
(一体どうしたら元に戻れるのだよ…俺は一生このままトラ吉として生きるのか!?それは嫌なのだよっ)
そんな時だった。火神がキッチンに席を外した隙に、バスケットに入れられた徠我が話し掛けてきてくれたのだ。
「みゃぁあ〜(みろりまく、らいじょうぶでしゅ)」
(徠我?)
「なぁううぅ(ぼくのおねがいきいてくれたらもとにもどるにゃ)」
(は?)
「んにゃにゃあ(ぼくのおねがいかなえてくれるならかんがえてあげましゅ)」
(お前のお願いとは何なのだよ、徠我)
「きしぇにゃん(きせきゅんあいたいでしゅにゃ…だからきせきゅんあわせてくれるっておねがいきいてくれたらみろりまく、もどるにゃ)」
(・・・まさかの黄瀬っ?黄瀬だとっ??何故黄瀬なのだよっ(゜ロ゜;)そこは嘘でも“みろりまく”だろう徠我ぁあああ)
「うぅうんにゃ(うそはママにおこられるだめにゃ。パパよくママにぴしってにゃってるにゃ)」
(ぴしっ?あぁ、イグナイトか)
「徠我君、やっとご機嫌になりましたね。2号が居なくてさっきまですごく不貞腐れてたんですよ?やはり猫は猫同士気が合うんですね(^^)これもトラ吉君のおかげです!良かったですね徠我君、トラ吉君が起きてくれて。はいっ、シャンプータオルでふきふきしましたから、トラ吉君もキレイキレイになりましたよ」
そう言いながら、黒子はトラ吉を徠我の隣にそっと下ろしたのだった。
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