黒子のバスケ-短編-

□シュガーバター
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「敦、食べ過ぎだよ?」
「室ちん邪魔ーうるさいしー」
最後のまいう棒シュガーラスク味をサクサク食べながら、紫原は空になったビニール袋を覗きこんで淋しそうに溜め息を吐いた。

【シュガーバター】

先日氷室と一緒に行った100円ショップには、もうシュガーラスク味のまいう棒はない。

紫原が買い占めした為、次まで入荷待ちなのだ…ショップも予想外の買い占めに、追加発注が間に合わず次回納品分は30本入り2袋。来週まで入って来ないそうだ。

それもそうだろう。今年1月に発売され、落ち着いた売れ行きの中でバラ売りと袋売りで余裕の在庫を持っていた筈が、在庫30本入り5袋+店頭販売分を紫原が買い占めしたのだから。

他の街のショップに行けばあるかも知れないが、何と言っても遠い。

「何で地下鉄ないんだよー秋田も地下鉄通せよー」

秋田に地下鉄はない。バスだって市内はまだしも田舎になると頻繁には走らない。

電車の本数だって都内にははるかに及ばない。

近所のスーパーにも違う系列の100円ショップは入っているものの、そのショップにはメジャーな味が3種類位並んでいるだけ。

「黒ちん・・・」

逢いたいなぁー
でも逢ってくれるかなぁー。
別に何かを約束してる訳じゃない。
黒ちんがバスケ部を辞めた日から、逢ってない。
それでも・・・忘れた事なかったし。

すると、しょんぼりする紫原を見かねた氷室がこう述べた。

「敦、7月から夏休みがあるし…黒ちんとやらに逢ってきたらどうだい?」
「・・・」
「敦はどうしたいの?」
「…室ちん」
「何だい?」
「黒ちん逢ってくれるかな」
「敦が逢いに行けば、逢ってくれるんじゃないかな」
「でも、もう1年くらい逢ってないし…メールもしてねぇし」
「ケンカしたのかい?」
「わかんないしー」

そう。紫原には黒子が部を辞めた理由がわからなかった。
バスケで対立することもあったけれど、まさか黒子のほうが先に辞めるとは思いもよらなかった。

「じゃあ“友達”になってきたらいいよ」
「はぁあ?!意味わかんねーしっ(*`Д´)ノ!!!」
「嫌われたかどうかもわからない、連絡も取らない、逢ってくれるかもわからない程度の仲なんだろう?」
「・・・」
「だったら黒ちんと友達になって、また逢いに来るって言って、秋田に戻っておいで(*^^*)」
「・・・」
「敦が頑張れるように、俺からこれをあげよう(*^−^)ノ」

はい、と寄越されたビニール袋の中には【まいうシュガーラスク“シュガーバター味”】が。

「棒じゃないし」
「ふふ。面白いよね、一口大になってて袋入りだよ」

敦が探してたヤツじゃないけど、食べてくれたら嬉しいよ…そう言って、氷室は紫原の部屋から出ていった。

紫原が早速袋を開封すると、辺りには一瞬にして甘い、そしてほんのりしょっぱいバターの香りが広がった。
1つ摘まんで口に放り込むと、甘さの後にバターの塩気がやってきて、これはこれで旨いかも…と思った。

「室ちんありがとー」

しゃりしゃりサクサクと80グラムをペロリと平らげ、もう一袋…と手を伸ばしてやめた。

「明日のおやつにとっておこー。」
きゅっ、とビニールを結ぶと紫原は立ち上がり「新幹線の切符〜」と呟きながら部屋を後にした。


再来週からは夏休み。
黒ちんに逢いに行こう!
黒ちんに逢って、そして言うんだ…大好きだよーって。
きっと黒ちんは、あの水色の大きな瞳をさらにでっかくして俺を見上げてくるだろう。

「今から夏休みが楽しみだしー」
ウキウキしながら歩いていると、後ろから氷室に声をかけられた。
「敦、その前にテストで赤点取ると帰れないよ?黒ちんに逢えないからね(*^^*)」
「へ?( ̄□ ̄;)」

持ち上げて突き落とす。
さすが陽泉バスケ部で紫原係を自負する男・氷室であった。

-END-

シュガーバター味好きーっ(*^^*)
 

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