黒子のバスケ-短編-
□テツヤっちとりょーたくんとしぇいちゃん
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※これの続編です
「あら、どうしたの征ちゃん?…ソレ」
「拾ったんだ」
そう。拾ったんだ。普段なら見過ごすようなたかが子供の迷子…でも、どうにも気になって気付いたら声を掛けて返事も待たずに連れ去ってきてしまった。
全くもって自分らしくない行動に、赤司は苦笑いしか出なかった。
ソレ、と実淵が指差したモノは、赤司の胸に抱かれた水色の髪と透き通るような水色の瞳を持つ可愛らしい子供だった。
【赤色と水色の出逢い】
練習試合で神奈川に来ていた赤司であったが、相手校の監督に挨拶をした帰りに子供を見つけたのだ。
小さな小さな子供。泣くのを我慢しているような、でももう泣きそうな顔をした水色の髪をした子供。
普段ならとっとと誰かに預けるか、放っておく赤司であったが、何故か気になり人混みで潰されてしまいそうになっていたので、落ち着ける場所で話を聞こうと洛山高校の控え室に連れてきたのである。
「さて、と。何か飲むかい?」
胸に頭を擦り付けイヤイヤと首を振る子供。
「じゃあお名前はぁ?言えるかしら〜」
ゆっくり顔を上げ、じーっと実淵を見つめると、子供は目をコシコシと小さな手で擦り「はい」と笑顔でお返事してきた。
(…可愛い…)
(あらヤダ可愛い)
(((ナニコレ?可愛い)))
控え室に居た全員が心の中で“可愛い”と言う呪文を唱えるほどその子は可愛いかった。
「おにいちゃんおろしてほしいでしゅ」
「いや、抱っこしたままがいいよ。ここに居るのは馬鹿みたいに馬鹿デカいバカな奴等ばかりだからね。踏まれたら大変だよ」
―ナニソノバカバカバカナイイカタ?ダレモフマネーヨ(怒)―
全員が思ったが、まだ死にたくないのでお口にチャックして静観しておりました。
「えと、えと…たすけてくれてありがとうごじゃいましゅ(ペコリ)ボクはきしぇてちゅやでしゅm(。_。*)m」
「きしぇてちゅや?」
―赤司が幼児言葉反復したっ( ̄□||||!!―
「はいっ!…しゃ…」
(((しゃ?!)))
「しゃんしゃいでしゅっ」
必死に指を3本出そうとする姿に悶えつつ、赤司は聞いた事のある名字に嫌な予感を覚えた。
“きしぇ”…恐らく間違いなければ“キセ”ではないか?と。
バスケ関係で“キセ”なら自分には心当たりがある。有りすぎる…が、同じ名前など腐る程ある世の中だ。
「間違っていたらごめんよ?お名前は“キセテツヤ”であっているかな?」
「はいでしゅっ(〃⌒∇⌒)」
どうやら名前を呼ばれて嬉しいようだ。その愛らしさと言ったら、もぉ〜洛山へ拉致したい位の威力!
「じぃ〜っ(ΘΔΘ*)」
テツヤは赤司を見詰め、ほにゃ〜んと笑った。
「おにいちゃんのおめめ、ゆうひのおそらのいろみたいでキレイでしゅ…キラキラでしゅねえ」
「そう。夕陽の色か…ありがとう。テツヤは可愛いね。僕は赤司征十郎だよ。“征ちゃん”って呼んでくれるかな。それともう1ついいかな?テツヤ」
「?しぇいちゃん、なんでしゅかーっ(*^^*)」
(京都に持ち帰りたい。実に癒される笑顔だ…赤司家に迎えたいな)
「テツヤは“黄瀬涼太”を知っているかな?」
「りょーたくんはおにいちゃんでしゅよっ!しぇいちゃんしってるんでしゅか?いっしょにきたんでしゅけど…ぼく…ぼく…ひとがたくさんいて、りょーたくんとおててはなれてしまいましたでしゅ…うっ、ぐしゅ…ふぇえええっ」
泣き出してしまったテツヤの涙をふきふきしながら、実渕は驚いたように声をあげた。
「え、黄瀬涼太って征ちゃんと同じキセキの1人よね?海常の…」
「それしかいないでしょ。あの黄色の弟は水色か…まさにキセキ!流石キセキ(笑)」
馬鹿にしたような言い方の葉山をガツンと殴り、赤司はテツヤに向かってそれはそれは綺麗に微笑むのだった。
そしてこう述べた。
「テツヤ、今涼太に連絡してやるからちょっと待てるかい?」
とたんにキラッキラッした水色の瞳で赤司を見上げ「はいでしゅっ」と本日イチバンのお返事をしたテツヤでございました。
一方その頃、テツヤとはぐれた黄瀬の行動に海常高校バスケ部メンバーは疲労しきっていた・・・主に主将の笠松が。
-再会編に続く-