-giftbox-

□“セレスタイト”の希想様から頂いたお話です。
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蜂蜜みたいに甘くって。


「どーしたの黒ちん、食べないの?」

のんびりとした声で訊かれてテツヤはその視線から逃れるようにテーブルの上に並んだ数々のケーキやプリン、チョコを纏ったフルーツといった甘いものを見てまだ一口も食べていないのに満腹になった気がしていた。
そのままテツヤは店内をぐるりと見回す。
明るい店内は賑わっていて殆どの客が女性という非常に居辛いのだけれどテーブルの向かいに座る紫原はそうではないようで寧ろ全く気にせず先ほどからケーキに夢中といった所だ。

おまけに今はハロウィンのシーズンだからとカボチャの飾りがあちらこちらに設置されていて限定デザートがあるとかで通常よりも混んでいる、らしい。
ちなみにらしいというのは隣のテーブルから聞こえた情報だ。

「いえ、食べますよ。せっかくの食べ放題ですからね」
「そーそー。せっかく赤ちんがチケットくれたんだから食べないと損しちゃうしー」

なんて言ってる傍から山盛りだった皿が空になっていく。
しかも甘いもの、いや甘いものに限らず紫原はお菓子の類を食べている時は本当に幸せそうにしている。
それを知っているからこそ赤司は彼にこの店の招待券をくれたのだろう。

「なーに?」
「いえ、紫原くんはこういう所でも変わらないんだなと思ったので」
「なにそれ、意味分かんないんだけど」
「気にしないでいいですよ」

とは言ったものの紫原は納得がいかないようでフォークを咥えたまま首を傾げている。
「あ」と声を漏らしたかと思えば皿の色鮮やかなカボチャのプティングを一口分差し出してきた。

「あーん」
「え……ちょっとそれはいくらなんでも」
「あれー?食べたかったんじゃないのー?」
「そういう事でもなくて、その……」

チラリと店内を見るが満席状態でさらにただでさえ目立つ紫原はかなり目立っていた。
そんな状況下であーん等といった行為をしたら注目度は今の比ではない。
だが紫原はやはり気にする素振りは一切なく、むしろテツヤが口を開かない事に苛立っているようで。

「黒ちんって気にしすぎだし」
「紫原くんが気にしなさ過ぎなんですよ」
「つーかさー。俺と黒ちんって付き合ってるんだし気にしてたら何にも出来ないじゃん」

頬が膨らんで明らかに不機嫌になってしまった紫原は吊り上った眉のまま差し出したプティングを自分の口に運んだ。
気を悪くさせてしまっただろうか。
心配するテツヤを尻目に紫原はおもむろに指でケーキのクリームを掬ったかと思えばその指を「えいっ」という効果音付でテツヤの唇の端にくっつけたのだった。

「……なにをしてくれてるんですか、キミは」
「あーあ、クリームついちゃったね」
「キミがつけたんですけど」
「うん、俺がつけたから」

綺麗にしてあげる。

カタン、と椅子が鳴りテーブルに手をついた紫原の顔が近づいてきた。
まさかと思った時には既に遅く。

ぺろりっとテツヤの唇を舐めた紫原がニヤリと満足げに笑みを浮かべていた。

「なっ!!?な、なにして」
「このクリームおいしー。……あ、黒ちんが甘いから美味しく感じるのかもねー」

ねぇと訊いてくるのでテツヤはただ顔を真っ赤にさせて俯く事しか出来ず。

「てかさ、誰も気付いてねーし。さすが黒ちんだよね」

とりあえず自身の影が薄くてよかったなと思うのだった。

「あ、」
「今度はなんですか」
「トリックオアトリートーって言えば黒ちんにイタズラしてもらえたのに」
「イタズラして欲しいんですか?」
「んー……黒ちんからのキスなら欲しいかも」

恥ずかしがる素振りすらなく、笑みを浮かべるその瞳は真剣そのもの。
逃れられない眼差しにテツヤは「お店を出たらですよ」と、なんだかんだで甘いのであった。


※セレスタイト様のサイト66万ヒットを踏んでリクエストした紫黒でハロウィンネタ!この度は幸せと癒しをありがとうございましたっ(*^^*)

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