シンさんの飼い犬

□天敵…!?
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それは、ある うららかな昼下がり───

(…ったく、なんっで このオレが こんなヤツ相手にビビんなきゃなんねーんだよ…っっ!?)
腰に佩いた刀を抜くことも出来ず、オレはじりじりと後退った。
「い、いーじゃねーかよ、コレぐらい…!」
通じないと解っているのに、聞き分けてくれることを期待して 声を投げてみる。
「……」
「な、なぁ…いーだろ? ホラ、お前にも分けてやるからよ…」
「……」
じとっ と見上げてくる瞳に訴えてみたが、態度は軟化しそうにない。
「…な?」
おもねるように、持っていた干し肉をふたつに折って差し出してみる。
「……」
小さな足が、こちらへと一歩踏み出され、やった!と思った途端、
「ゥわんッ!!!」
「うわぁっ!?!」
…情けなくもオレは、せっかく厨房から盗ってきたばかりの干し肉を放り出し、樽の上に跳び乗った。

「よくやった、ミント。」
低い声が通り、甲板に細長く影が映った。
屈んで干し肉を拾う足元へ、ミントのヤツが得意げに寄っていく。
「くぅ〜ん」
「ヨシヨシ…今日もお手柄だな。」
(…あの、ナギ兄がっ?!)
様々な意味で敵うことの無い兄貴分が、もんの凄い優しい目つきで、小憎たらしいシンのヤツの犬っころを 撫でた!?
「…ったく、ハヤテは…。お前の方がどんだけ利口なんだか。」
おまけに、あの、必要以上に喋ることの無いナギ兄が、犬に話しかけてる!?
(有り得ねえ。いろいろと 有り得ねぇから…!!)
内心ツッコんでると、ふ とナギ兄と目が合った。
(やべぇ! 叱られるッ!)
身構えると、
「…シリウスの“最強剣士”が、情けねぇな…」
溜め息吐かれたっ!?
(くっそ…)
なんだよ、なんだよ、なんなんだよっ!!

ミントが来てからというもの、オレの毎日はいつもこんなだ。
別に、犬が怖いわけじゃねー。
主人に納まった、シンのヤツが怖いわけでもねー。
ナギ兄は……怖いけどな…。
なんつーか…どう言ったらいいんだ?
ミントには 勝てねぇ。
そんな気がする。
こんな ちっこい犬なのに だぜ?
──っかーっ、オレ、情けねえ!?
オヤツ盗るのも、掃除サボるのも、こっそり昼寝も、
ミントが来てから 成功した例しがねえ。
おまけにミントのヤツ、その度に褒められてんだぜ、
なんっか……悔しいじゃねーか。
くっそー…見てろよ、ミントのヤツ。
ぜってー ギャフンと言わせてやっからな!!

小馬鹿にした表情で見上げてくるミントを睨むと、
まだ樽から下りられないまま、
オレは心に誓ったのだった。


<FIN>




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