ご都合ストーリー

□帰ってこねぇな
2ページ/2ページ

食堂は、まだ明かりが灯っていた。
ガチャリと扉を開けると、見慣れた小さな背中が視界に飛び込んでくる。
「ナギさん、何か忘れ物ですか?」
ぱっ、と振り返った顔が、一瞬で曇る。
「ナギさんなら、もう部屋に帰られましたよ。夜食はありません」
まるで自分との間に線を引くように、告げられた言葉。
くるっと向けられた背中に、喉元まで出かかった文句をぶつけることも出来ず、拳を握った。
と。
「きゃっ…」
「!」
傾いていく身体をとっさに抱きかかえて、ほぅ と溜め息をつく。
(あっぶねーな…)
いつもなら悪態をつくかからかうところだが、思うように言葉が出ない。
見下ろすと、

視線が絡まった。

「…」
「…」
言葉が出てこない。
焦れったくて、もうどうでもいい、とさえ感じる。
が、○○から目が離せなくて…。

「…」
「…」
気づいたら、

…唇を重ねた後だった。

「…ハヤテ」
「…悪ィ…」
至近距離の瞳に呟いて、もう一度。
「……わる、かった…」
「…」
睫毛の触れるくすぐったささえ、たまらなく愛しくて。
「……逃げねぇのか?」
「…」
かするように唇に触れる。
答える声は聞こえないけれど。
縋りつくように自分のシャツを握る手と。
頬を伝っていく滴に。

答えを得たと、思った。


<FIN>




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ