月、満ち欠けの空
□第一話
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夏の暑い日、城が織田の手により炎上しこの身にある“力”を護る為に父と母に「生きろ」と隠し通路へ放り込まれ、閉まった扉の向こうから両親の悲鳴と倒れる音が聞こえ、泣きながら長い長い暗い通路を走り、辿り着いた出口からまた宛もなく走り歩き続け、そして傷だらけで倒れていた私を助けてくれたのは小さな村に住む村長夫婦だった。
まぁ目覚めた時は吃驚した。
けれどこれが現実なのだと頭の中では理解したし、後は自力でこの場所で生きる術を探すのは必然。だから薬師(薬草に超絶詳しい)として私を助けてくれた、この小さな村のこの家で生活している。
*****
「桜ねぇ!!」
慌ただしく扉を開け放ち入って来たのは、私がお世話になっている村の村長さんの息子だった。
『どうした颯真?』
走って来たからか息づかいが荒い。
その後に村の大人達が数人駆け込んで来て、それは戸板に仰向けで寝かせられ運ばれてきたのは何やら甲冑を着た男性だった。
「颯真と瑞季が見つけたらしくてね」
「桜姉!このお侍さまお腹から血が!!」
『出血!?早くそこの畳間へ!』
「は、はいっ」
「何か手伝える事はあるかい桜ちゃん」
『あ、じゃあお湯を沸かして下さい!』
私は颯真と瑞季を家へ帰して、袖が邪魔にならないように襷掛けし、治療に必要な道具を持ち出し、運ばれてきた男性が寝ている畳間へ。
戸板に寝かされている男性の傍へ膝をつき、心の中でゴメンナサイと謝りつつ、陣羽織から甲冑それから着物を脱がさせて頂きました。
裸のままだと目のやり場に困るので、少し大きめの布を掛け未だ血液が駄々漏れなお腹の傷の治療を始める。
*****
それから数十分後。
糸と縫い針で傷口を塞ぎ、清潔にする為に用意して貰った湯を人肌ぐらいのぬるま湯にして手拭いで身体を清め、その後は大人達に手伝って貰って布団に寝かせ畳間を出た。
「桜ねぇちゃん…」
「あのお侍さまは?」
『大丈夫、後はお侍様の気力次第だから』
戸から顔を覗かせ聞いて来た颯真と瑞季。
それに優しく応えてやれば嬉しそうに顔が綻んだ。
「コレ、母さんから!」
『あら…お野菜、良いのこんなに貰って?』
渡された篭には、人参・白菜・茄子・葱と牛蒡が入っていて、こんなに貰って良いのか?と首を傾げ聞いてしまう。
いや…正直なところ有難いが。
「うん、お侍さまが起きた時大変だろう?って」
『そっか…ありがとうとお母さんによろしくね?』
「じゃあ、俺たち今日は帰るな!」
『気をつけて帰りなよ!』
「「は―い!!」」
そう言って元気良く帰って行った兄妹。
さて私はお侍様が着ていた着物や甲冑を綺麗にし、後は自分のとお侍様に少しでもお腹に入れる為の食事を用意するため準備に取りかかった。
[執筆:2013/06/26]