月、満ち欠けの空

□第二話
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私が名も分からぬお侍様の治療兼、洗濯をしていたのは辺りを茜色に染められた夕刻時で、洗濯で腕がつった私は囲炉裏がある居間へ上がり、今度は手拭いで甲冑を綺麗に拭き上げていく。


『うわ‥凄い‥』


当たり前か‥。
戦をしているんだ、汚れて当たり前なんだ。甲冑には土と埃、それから相手の返り血と自分の血とで汚れていて、その中には刀傷などもありデコボコと使い古された感が否めない。それだけ大事で己の命を守るもので、それでも怪我をする事もあり身体や腕には無数の刀傷がついていて痛々しい。

何回も水を替えてやっと綺麗になり、男が寝ている頭の上ら辺に甲冑と手鋼と脛当てを二本の刀と一緒に置いた。
刀も血がこびり付いたままだと斬れ味が落ちるし錆びるので、出来る範囲で綺麗にしておいたが、まさかこんな見様見真似の知識(城の医務室で見た縫合術)が此処で役に立つとは思わなかった。









そして私は眠っている男を見た。


‥‥‥‥‥?


そこで問題発生。
なんかこの顔、確か戦場に出た時に見た事があったけどその時の私は男装をしていたけど。そして目の前に居る男は前髪を後ろに撫で付け左頬に傷があって体格が良い。


『・・あ・・』


ま さ か !


もしかして私の辿り着いた先って奥州の地だったの!?じゃあまさかのまさかで、今目の前に怪我して横たわって寝ているのは、片倉小十郎景―――!!!???しかも私が初陣で戦った彼ですかマジか。偶然にも伊達政宗公の家臣さん助けちゃったよ。

ま、今更なんで知ってても今は忘れる事にしよう彼の傷が良くなり目覚めれば、もう会うこともないんだし。






[執筆:2013/06/29]

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