月、満ち欠けの空

□第三話
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『んん―‥』


ググッと背を伸ばし起き上がり、布団を片し厨へ。釜へお米を入れ炊き、大根の味噌汁を作り囲炉裏へ吊し後は炊き上がるまで彼の手当てを‥と思い移動した。

戸をスッと開け中に入り彼の怪我の前へ座り薬箱を横へ置き「失礼します」と声を掛けてから傷を拝見し、背中に丸めた座布団を入れ腰を少し浮かせてから、包帯を取り新しく薬液に漬けた布を傷口に当て新しい包帯で巻いていくと、微かだが上の方で呻き声が聞こえたので座布団を取り外して布団を直し彼が目覚めるのを待った。


「…っ…??」
『目…覚めました?』
「!!!?」


ガバッと勢いよく起き上がった彼。


「狽ョっ…!?!?」
『あ、まだ寝てなきゃダメです!』


起き上がったのは良いが相当痛かったらしい。少し涙目になった彼は再び布団へ沈んだ。


「…ここは」
『ここは小さな村にある私の家よ』
「…お前は誰だ?」
『私は桜、貴方を治療しました』
「…治療?」
『はい、この村の傍にある森で倒れていたそうです』


お腹を斬られ血だらけで気を失っていた、と付け足せば彼は一度目を瞑り再び開け「すまない」と言った。私には何がすまないのかが分からず黙っていた。


『…貴方の武具一式はそこにあります』
「………」
『貴方の傷が塞がるのは最低で三日です』
「…そんな短いのか?(傷は深い筈だが)」
『はい、もし急ぐなら痛み止めを飲んでからです』
「………」


最後に「超絶苦い薬湯ですが」と笑顔を絶さずに言えば無言になった。


「…すまないが、暫く世話になる」
『ふふ、分かりました』
「俺は片倉小十郎景綱と言う者だ」
『はい片倉さま』
「ああ、好きに呼ぶといい」
『はい…では、こじゅ様で!』
「こじゅ…?」
『ふふ、ダメ…ですか?』


いつも眉間に皺を刻んでいる人の焦った表情が見て満足し、名前も"こじゅ様"と呼ぶことを許可して貰った。それから私と小十郎は少し遅い朝餉を採ったのだった。






[執筆:2013/07/01]

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