月、満ち欠けの空

□第五話
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‐小十郎side‐



事の発端は桜の「安静にしろ」と言う忠告を無視して、弛んだ筋肉を引き締める為に早く政宗様の下へ馳せ参じたい為に庭へ出て鍛錬したのが始まりだった。

そこに俺の様子を見にきた桜に自身の物だろう刀を投げ渡し俺の肩慣らしに付き合って貰った、だがそこまでは良かったんだ。

桜の「本当に問題ないのか?」と言う問いかけに瞳を剃らさなければ、傷口を押された時に呻かなかったら(我慢すれば)此処まで桜が怒る事もなかったに違いない。

それに助けられ治癒されてから、どうにも桜には頭が上がらない。後にも先にも頭が上がらないのは俺の義理の姉であり、母のような喜多だけだと思ったが違うようだ。


「ククッ‥情けねぇなまったく」


だが‥そんな強気な桜を俺のモノにしたいと、その治療知識を伊達にも是非欲しいと思った。普通だったら今の俺の腹傷の治療期間は二三週間て所だろうに、その腹傷には何かで縫ったような跡がありもう繊維はくっつき始めているぐらいだ。

この様な知識…伊達には存在しねぇ。

それと薬草の知識も豊富とみた、短い間だったがどれが薬草でどれが毒草かを教えて貰っていて、毒草でも偶に治癒出来る物が存在するとも初めて知った。


「しかし、あの薬湯は苦い‥」


目が覚め結局翌日には飲むに至ったが。

桜が超絶苦い薬湯と言ったのには納得した。なぜこんなにも苦いのか‥を聞けば「傷に体の中から効くように」と作った物らしい。

その薬湯を飲んだ俺の腹傷の糸は明日取れるらしく、政宗様の下へ戻った後にお礼も兼ねてまた桜に逢いに来ようと思う。

ただしその時は桜も連れて行くつもりでいるが、桜は「行かない」と突っぱねるだろうな。

そして桜に"何処か"で逢った事があるような‥まだ主が梵天丸様と呼ばれていた頃と政宗様に名を変えた後に出た主の初陣の時‥だが肝心な部分が思い出せない。

あの時、桜にあの左目の包帯はなんだ?
と聞いてみたかったが、聞くのも失礼かと思い止まった。

さて、この事も含めてどうしたものか‥と怒って出て行った桜を布団に入り"安静に"待つことにした。






[執筆:2013/07/08]

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